提供:金沢日和
志賀町は、日本海の魚介、能登の米、発酵の知恵が息づく醤油、そして皮むきから干し加減の見極めまで、手間と時間を重ねて仕上げるころ柿まで——里山里海が育んだ“おいしいもの”がぎゅっと詰まった町。食材の力強さはもちろん、手間を惜しまない作り手の仕事が、その味をさらに深くしています。
志賀町の食を支える事業者と、料理研究家 えいさん、発信者のはる夫婦、稲岡町長が一堂に。試食と対話を通じて、里山里海の恵みと“人の絆”を、県内外へ届ける言葉にしました。
目次
志賀町ってこんな町
志賀町は能登の西側、雄大な日本海と緑美しい高爪山に抱かれた、海と里山が近い町。魚介、米、発酵の文化が身近にあり、ころ柿も皮むきから干し加減の見極めまで手間と時間を重ねて仕上げられます。
町が認定する「志賀町優良特産品」は、味だけでなく独自性や製法、選び抜かれた材料に物語が宿る逸品揃い。作り手同士が自然に支え合う空気も含めて、志賀町の魅力です。今回はその魅力を「食べて」「語って」「発信する」ことで、志賀町らしさを言葉にしていきました。
座談会参加者のご紹介
震災からの歩みを止めず、地域に根を張ってきたジャンルの異なる地元密着企業が集まり、稲岡町長も同席(写真の5名)。さらに、料理研究家 えいさんと、はる夫婦が“伝える”側として加わり、町の今を言葉にしていきました。
特産品をアレンジしたレシピをいただきながら、商品の特徴や味の話や、支え合いの空気、人の温度感、訪れた人が感じる心地よさまで、志賀町の魅力の正体が一段深く掘り起こされていきました。
参加者一覧(左から)
・株式会社能登ファーム志賀(以下、能登ファーム志賀):梶谷 茉莉花さん
・株式会社能西水産(以下、能西水産):吉田 千里さん
・志賀町 町長:稲岡 健太郎さん
・カネヨ醤油株式会社(以下、カネヨ醤油):木村 美智子さん
・株式会社いこいの村 能登半島(以下、いこいの村):小川 貴志さん
(道の駅とぎ海街道運営)
志賀町の恵みを“ひと皿”に。試食会スタート
料理研究家 えいさん考案のかんたんレシピ「いかの濃厚炊き込みご飯」と「ころ柿とクリームチーズのトースト」実食。志賀町の優良特産品を「家庭でも真似できる」に落とし込みつつ、食材の背景が見える志賀町らしさを感じる味に組み立てました。
1品目は「いかの濃厚炊き込みご飯」。能西水産のいかのいしる干しに、道の駅とぎ海街道にて販売している、いかの塩辛(町内製造)、そしてカネヨ醤油の薄口醤油は「ほぼそのまま、少しだけ」という潔い使い方で、旨みの芯を立たせています。受け止め役になるのは、能登ファーム志賀のコシヒカリ。粒の立ち方と甘みが、いかと塩辛のコクを優しくまとめ、口に運ぶほどに「旨味が溢れ出るほど濃厚なのに重くない」美味しさが残ります。
2品目は「ころ柿とクリームチーズのトースト」。土台は、志賀町で人気のビストロ「イグレック」の自家製クルミパン。ころ柿は、オリーブオイルとバルサミコ酢でさっと和えて甘さを引き立て、クリームチーズの塩気と重ねることで、デザートではなく食事やおつまみとしての一皿に。干して、待って、仕上げる——人の手と時間が凝縮されたころ柿を、志賀町らしい食のセンスでアップデートする提案でした。
試食会では、一口目から「おいしい!」の声が連鎖し、テーブルの空気が一気にほどけました。続けて「お世辞抜きで、自分たちの食材がこんなに化けるなんて感動です」「この組み合わせで、こんなに立体的な味になるんですね」と、驚き混じりの声が次々に上がります。
「いかの濃厚炊き込みご飯」を口に運んだ瞬間、まず話題になったのはその旨み。能西水産の吉田さんは「濃厚なのに、後味が重くないのがいい」と言い、いこいの村の小川さんも「塩辛のコクが出ているのに、くどくならない。米がちゃんと受け止めてる」と頷きます。カネヨの薄口醤油は“ほぼそのまま、少しだけ”。だからこそ香りの輪郭が立ち、素材の旨みが前へ出る。「これいっぱいに志賀町のおいしいが全部詰まってますね」と皆、笑顔に。海と里山が近い志賀町の「食の距離の短さ」が、そのまま一皿の説得力になっています。
お米の話になると、能登ファーム志賀の梶谷さんからは生産者ならではのコメントが飛び出します。「うちはコシヒカリにミルキークイーンを混ぜることもあるんです。おこわ風になって、食感がぐっと良くなる」と話し、えいさんも「確かに、混ぜてもいいですね!」と納得の様子。
続いて登場したのは「ころ柿とクリームチーズのトースト」。運ばれた瞬間、場が少しざわつきました。いこいの村の小川さんは「ころ柿の手がかかっているからこその甘みが生きていますね」と言い、カネヨ醤油の木村さんも「干して、待って、仕上げる。その時間まで含めた“ごちそう”なんだと思う」と続けます。えいさんは「オリーブオイルとバルサミコで和えると、甘さがきれいに立って大人の味になるんです」とポイントを添えました。イグレックの自家製クルミパンの香ばしさがころ柿の甘みを受け止め、クリームチーズが全体をまろやかにまとめています。
里山里海の恵みだけでなく、志賀町に根付く美味しさを封じ込めた一皿に、「この味を現地で食べたい」「作っている人の顔が浮かぶ」と、志賀町へ足を運びたくなる言葉が自然にこぼれていきます。
試食会は、単なる「おいしいを確かめる場」ではなく、志賀町の食が「風土」と「人の手」と「時間」で磨かれていることを、確かめる時間にもなりました。
【料理研究家 えいさん】
素材それぞれの良さを引き出すことを一番大事にしました。素材そのものが強いので、こっちが頑張りすぎない方がいいなと思って、味付けは足し算せず最小限にしています。あと、家でもまた作れるように、工程を増やさず“迷わないレシピ”にしました。ころ柿みたいに手間と時間がかかる食材は、人の仕事がそのまま味になるので、そういう背景まで伝わる一皿にしたかったです。
料理研究家 えいさんの詳細はこちら
●今回のレシピ
いかの濃厚炊き込みご飯のレシピはこちら
●今回のレシピ
ころ柿とクリームチーズのトーストのレシピはこちら
町長と語る、志賀町の魅力とこれから
試食の余韻が残るなか、話題は自然と「志賀町って、結局どんな町なんだろう」へ。商品以上に話題の中心になったのは、「この町を支えている“人”の実感」でした。
稲岡町長は、震災直後に町内を回って目にした光景を振り返り、「現場の切実さと同時に、困ったときほど自然に手が差し伸べられる空気があった」と切り出します。町長は「志賀町の魅力は『苦しい時こそ手を取り合える人の絆』にある。このポテンシャルをもっと世界に自慢したい」と言い切りました。そのうえで町長が今、力を入れていると語ったのが「現場を次世代へつなぐこと」。事業者同士が主体となって世代を超えた結び付きや連携が生まれる動きを、応援していく姿勢を示しています。
たとえば志賀町の名産「ころ柿」は、晩秋の澄んだ空気と冷たい風で甘みが凝縮され、いくつもの工程を重ねて仕上げる手仕事の結晶。 震災後は担い手が減るなかで、ボランティアが支えになる動きにもチカラを入れており、現場をどう守り、どう次へ渡すかが今のテーマとして共有されました。
町の姿勢に呼応するように、若手の声も前向きです。能登ファーム志賀の梶谷さんは、震災後に農業者同士の集まりが増え、生産量も伸びたと話し、大先輩が自らを「素人」と語る謙虚さと、技術を惜しみなく伝える風土に触れ、この町には人を育てる文化があると実感したと続けました。
カネヨ醤油の木村さんは、震災後に寄せられた利用者の声や来訪をきっかけに蔵見学を開始。全国からの継続的な支持が励みになっていると振り返ります。
観光拠点・いこいの村の小川さんは、復興を学ぶ大学生の来訪増加を挙げ、自然と文化が重なる志賀町の価値を若い世代が学術的に捉え始めている点に期待を寄せました。『道の駅 とぎ海街道』では、さくら貝や三十六歌仙貝に関する文化発信も行われています。
終盤には志賀町の魅力を改めて共有。「海が好きで、釣りができて、何より人がおしゃれで元気」と笑顔を見せる木村さんに続き、能西水産の吉田さんは「世界一夕日が綺麗で、世界一長いベンチがある。時間を忘れられる景色がここにはある」と話します。
「今日みたいに、つくる人、迎える場所、伝える人が一緒に食卓を囲むと、志賀町の魅力が言葉になりますね」と稲岡町長。会の中では、えいさんのレシピをきっかけに食材セットやお試しセットを「道の駅でも展開できたら面白いね」といったアイデアも出ましたが、町長が特に手応えとして挙げたのは、事業者同士が自然に良さを認め合い、つながろうとしていた空気感でした。「こういう連携が生まれていくのは、すごく喜ばしいこと。志賀町は“点”じゃなくて“面”で魅力があるので、チーム志賀町として、みんなで発信していけたらと思います」と語りました。
【町長:稲岡 健太郎さん】
志賀町の魅力は、食や自然だけじゃなくて“人”も含めての総合力だと思っています。だから、現場の皆さんの頑張りがちゃんと届くように、SNSやYouTubeなどの発信も含めて、町としてももっと旗を振っていきたい。チーム志賀町として、外に向けて発信する流れを強めていきたいですね。
志賀町の観光はこちら
【木村 美智子さん|カネヨ醤油】
震災のあと、町の方に『お宅の醤油がないと、うちの食卓が寂しいわ』って言われたのが忘れられません。あの一言に支えられました。全国で待ってくださる方、リピーターになってくださる方がいるのも本当に力になります。支えてもらっている分、味でちゃんと返したいです。
カネヨ醤油の詳細はこちら
【梶谷 茉莉花さん|能登ファーム志賀】
志賀町って、若い人が挑戦すると面白がってくれる人が多いんです。先輩たちが『やるなら協力するぞ』って背中を押してくれる。何十年も作ってる方が『まだ素人や』って言う、その謙虚さにも学ばされます。こういう“人を育てる文化”が、この町の強さだと思います。
能登ファーム志賀の詳細はこちら
【小川 貴志さん|いこいの村】
これまでは地元の認知がある分、とにかく“来てくれた人の満足度”を高めることに集中してきました。でもこれからは、自分たち自身が志賀町の“アイコン”になる意識も必要だなと思っています。いま力を入れているのが『三十六歌仙』のPRで、志賀町の文化や物語の入口をつくりたい。道の駅の運営も含めて、来た人に町の魅力をちゃんと渡す場所でありたいし、事業者さん同士をつなぐ役割も、もっと担っていきたいです。
【吉田千里さん|能西水産】
富来の海は厳しいけど、その分、漁師はひたむきで熱い。だからこそ獲れる魚には自信があります。志賀町は景色も最高で、夕日なんか本当にきれい。こういう“志賀町の良さ”を、もっと素直に、もっと堂々と伝えていきたいですね。
能西水産の詳細はこちら
【はる夫婦さん|人気インフルエンサー】
取材協力
志賀町のここが魅力!【優良特産品】
志賀町優良特産品のご紹介
志賀町の「優良特産品」は、町が味・独自性・製法・材料などを基準に選び、認定シールを付けている品々です。シールは“間違いない”の目印。魚介や米、醤油、ころ柿など、里山里海の風土と手仕事が育てた味に出会えます。
志賀町優良特産品の詳細はこちら
●今回紹介した商品が購入できるお店
道の駅とぎ海街道(紹介商品の購入可能|ころ柿、醤油、いしる干し、塩辛)はこちら
道の駅ころ柿の里しか 旬菜館(紹介商品の購入可能|ころ柿、お米)はこちら
志賀町稲岡健太郎町長からのメッセージ
志賀町には、里山里海の恵みを生かして“本当においしいもの”をつくっている人がいて、訪れた方をあたたかく迎える場所があります。ぜひ現地で、食と景色、そして作り手の人柄に触れてみてください。行政も、皆さんの魅力が県外や海外へ届くよう、発信や仕組みづくりでしっかり伴走していきます。
金沢日和から一言
今回あらためて感じたのは「試食」が単なる体験で終わらず、事業者の皆さん自身が“自分たちの商品の魅力”を新しい角度で捉え直すきっかけになったことです。食べ方の提案が入ることで、素材の良さがより伝わり、会話の熱量も一気に上がりました。 座談会の終盤では、自然と「事業者同士で連携できたら強い」という話に。えいさんのレシピをセット化し、道の駅などで販売できれば、泊まった人が“志賀町の味”を持ち帰れる導線になる。さらに家庭で再現しやすい形に落とし込めば、「また食べたい」「次は現地で」という気持ちにつながる——そんな具体案が、現場の言葉として出てきたのが印象的でした。宿や道の駅が入口になり、特産品が「持ち帰り」をつくり、動画やSNSが“次の来訪”を呼ぶ。ジャンルの違う担い手が同席した今回の座談会は、志賀町の食を「点」ではなく「線」で届けていく可能性を、具体の言葉で確かめられた場だったと感じています。
(金沢日和|編集長佐々木)
志賀町商工観光課
- 住所
- 石川県羽咋郡志賀町末吉千古1-1
(志賀町本庁舎) - 電話番号
- 0767-32-1111(代表)
- 公式サイト
- 志賀町商工観光課
※この記事は、2026年2月20日「金沢日和」で公開された記事を転載したものです。








