提供:ことりっぷ
長らく非公開だった、東京・荻窪の国の史跡「荻外荘(てきがいそう)」が、2024年12月、公園として一般公開。ノスタルジックな昭和初期の建築を眺めて、リフレッシュできる“癒やしのスポット”として注目を集めています。
さらに、2025年7月からは、「荻外荘展示棟」もオープン。杉並区のおいしいものを片手に、ゆったりティータイムを楽しめます。
思わず深呼吸したくなる、緑に囲まれた邸宅「荻外荘」
門には「近衞」の表札が掲げられている
JR「荻窪駅」から歩いて15分ほど。商店街のにぎわいを抜け、高級住宅街を歩いていくと、石造りの門が見えてきます。
ここは、かつての総理大臣・近衞文麿(このえ ふみまろ)さんが暮らしていた家。今も変わらず、「近衞」の表札が訪れる人を出迎えます。
緑に囲まれた玄関先のアプローチ
玄関先には、緑あふれる庭が広がり、やわらかな木漏れ日が足元を照らします。聞こえてくるのは、小鳥のさえずりだけ。時間までゆっくり流れているようで、気づけば、歩くテンポも自然とゆるやかになっていきます。
「荻外荘」の入館料は300円
「荻外荘」が建てられたのは、1927年(昭和2年)。設計を手がけたのは、築地本願寺や平安神宮などで知られる、有名な建築家・伊東忠太さんです。
もともとは、大正天皇の待医頭・入澤達吉さんの別邸として建てられましたが、1937年(昭和12年)、近衞文麿さんが譲り受け、移り住みました。
ここは“瓦屋根に洋風の窓”といった、ノスタルジックな和洋折衷の意匠をじっくり眺められるのが魅力。建築好きの人にとっては、ワクワクせずにはいられません。
細部までこだわり抜いた空間

建物の中は、見飽きることのない、レトロな魅力にあふれています。なかでも見逃せないのが、「食堂」と「客間」の正面に設けられた広縁。壁一面がガラス窓になっていて、ゆらぎのある手づくりのガラスが、やわらかな陽射しを届けてくれます。
幾何学的な窓の桟は、落とす影さえも美しい。時間帯によって光の角度が移ろい、その表情を変えていきます。
南側に広がる芝生広場の昭和初期の風景が、VRで再現されている
さらにここでは、「バーチャル荻外荘」が楽しめます。これは専用のタブレットを使って、昭和初期の芝生広場の様子をVRで見比べられるというもの。春と秋、それぞれの季節に合わせてシーンが切り替わるので、チェックしてみてくださいね。
日本の歴史を動かす会談が行われた「客間」
こだわりっぷりに驚かされるのが、戦前期に「荻窪会談」が行われた「客間」。内装から家具、調度品に至るまで、当時の雰囲気を徹底的に復原しています。
その場にいたのは、近衞文麿さんや、後に総理大臣となる東條英機さん、外交を担った松岡洋右さんなど、歴史に名を残す人物たち。

そんな歴史の舞台に、ARでタイムスリップしてみましょう。タブレットをかざすと、会談のメンバーが出現。会談の様子がよみがえります。写真とは違って、体や顔の向きまで変わるのが楽しい。見ているうちに、どんどん引き込まれてしまいます。

さらに、テーブルの上の小物にも目を向けてみてください。レトロなメモ帳やペン、鉛筆、グラスなど、まるで時間が止まったかのように、丁寧に再現されています。
「客間」のユニークな壁紙
また、奇想天外な動物が描かれた壁紙も、見どころの一つ。「これはどんな動物かな?」そんな風に、想像をふくらませながら、楽しんでみてくださいね。

がらっと印象が変わるのが「応接室」。この部屋は、チャイニーズ風の意匠でまとめられ、異国情緒が漂います。龍が天井を舞い、キラキラと虹色に輝く螺鈿のテーブルセットが置かれ、床には龍の敷瓦が。「ここにも、こんなこだわりが……」という発見がたくさん。
「書斎」に飾られた書は定期的に変わる
「書斎」に展示されている書は、近衞文麿さんが自ら筆を執ったもの。ぜひ足を止めて、じっくり眺めてみてくださいね。
自由に座れる椅子が並ぶ「別棟」
主屋の北側には、日だまりが心地よい「別棟」もあります。中庭を眺めながら、ゆったりまったり。足を休ませて、疲れを癒やすのに最適です。
隈研吾さん設計の「荻外荘展示棟」でカフェタイム
新施設の「荻外荘展示棟」
歴史ある建築を味わったら、2025年7月オープンの新施設へどうぞ。「荻外荘展示棟」は、「荻外荘」の道を挟んだ向かいにあり、誰でも気軽に利用できます。
設計を手がけたのは、建築家の隈研吾さん。周囲の民家に溶け込むような、多角形に広がる屋根が印象的な落ち着いたデザインです。
休憩所を兼ねたカフェスペース
建物は2階建て。1階には休憩所を兼ねたカフェスペース&ショップが、2階には展示室を備えています。
「スイーツセット」大最中(1,000円)
「荻外荘」がある杉並区といえば、こだわりの“おいしい”が集まる街。カフェでは、そんな地元の味を気軽に楽しめます。
人気メニューは、西荻窪にある「三原堂」の大最中とドリンクがセットになった「スイーツセット」。大最中は、たっぷりの餡が詰まった食べ応えのある一品。「ローストハウス ブラウンチップ」のコーヒーとの相性もバツグンです。
「スイーツセット」思い出はセピア色(1,000円)
「えっ、これが羊羹⁉」と驚く、こちらは、阿佐ヶ谷北にある「菓人 結人」の「思い出はセピア色」。口に入れると、コーヒーの風味と餡が合わさって、不思議なおいしさ。見た目のスタイリッシュさもさることながら、2016年「コーヒーを用いた和菓子のコンテスト」で大賞を受賞した実力派です。
11月末までの限定販売「アイス抹茶ミルク」(750円)
また、阿佐谷南にお店を構える「繁田園」の有機抹茶を使った「アイス抹茶ミルク」も絶品。すっきりした抹茶の香りとほんのり甘いミルクが、じんわりと体にしみる一杯です。
センスが光る個性派グッズも充実
「便箋ミニ」(310円)、「オリジナルマスキングテープ」(各400円)
ショップでは、杉並区や「荻外荘」にちなんだグッズがそろいます。おすすめは、「客間」の荻窪会談時を再現した机に置かれていた便箋や、オリジナリティーあふれるマスキングテープ。使いやすくて見た目も楽しいので、性別や年代を問わず人気です。
芝生広場でピクニック気分を満喫

お天気の日は、「芝生広場」へ足を運んでみましょう。広々とした緑の中、ごろんと横になるのも気持ちいい。ふと見上げれば、緑に包まれた「荻外荘」がすぐそこに。歴史ある建物が、公園に溶け込むように佇んでいます。
テイクアウト用「おにぎりの弁当」(800円)
「荻外荘展示棟」でお弁当をテイクアウトし、ショップでレジャーシートを購入すれば、即席ピクニックセットの完成。芝生の上でランチを楽しんだり、名建築を眺めて贅沢な時間を過ごしたり。小さな旅を終えるころ、心の奥がやわらかくなっているのに気づくはず。
文:安藤美紀
