開湯約1300年の歴史を持つ、加賀温泉郷の粟津(あわづ)温泉。その玄関口に佇むのが「満天ノ 辻のや」です。2024年のリニューアルを経て、和と洋が溶け合う上質な空間に。大浴場の巨大な九谷焼の壁に感動し、四季の花咲く庭園を散歩し、大臣表彰に輝く料理長の会席料理に舌鼓……。心も肌も深く癒やされる、幸せな温泉ステイをご紹介します。
目次
北陸最古の隠れ湯「粟津温泉」へ
東京駅から北陸新幹線「かがやき」に乗り、約2時間40分。加賀温泉駅から予約制のシャトルバスを利用すれば、およそ3時間で粟津温泉に到着します。
「加賀温泉郷」を構成する4つの温泉地のなかでも、粟津は落ち着いた静かなたたずまいが魅力。温泉街の中心に共同浴場があり、その周りに老舗旅館が数件並ぶ、こぢんまりとした温泉地です。
粟津温泉の開湯は、今から約1300年前。霊峰・白山を拓いた泰澄大師(たいちょうだいし)が、神様のお告げで、掘り当てたと伝えられています。
「奈良時代の人も、自分と同じこのお湯に浸かって癒やされていた」そう思うと、なんだかワクワクしませんか?
そんな歴史深い温泉街の入り口に構えるのが、ここ「満天ノ 辻のや」。洗練されたモダンな外観が目をひく和風旅館です。
庭園を眺めてほっとひと息つけるロビーラウンジ
館内に一歩足を踏み入れると、手入れの行き届いた美しい庭園が広がります。格子越しに差し込む柔らかな光と、足元に添えられた和傘が上品な和の空間を演出。「日常を忘れて過ごしてほしい」という、宿の想いが伝わってきます。
そのまま誘われるように角を曲がると、視界が一気に開け、開放感あふれるロビーが出現。奥行きのある造りは、時間の流れさえも穏やかに変えてくれます。
心地よい静寂の中、どこからか流れてくるのは優雅なピアノの旋律。自動演奏の柔らかな音色が、さらに心をほぐしてくれます。
庭園を眺めるラウンジは、まさに特等席。
お気に入りのソファを見つけたら、日常を忘れて、心ゆくまでこの景色に浸ってみてください。大きな窓から味わえる、四季折々の緑にうっとりしてしまいます。
チェックインを済ませたら、ラウンジの一角にある「浴衣コーナー」へ。ゲストは選べる色浴衣の貸し出しが無料。サイズも柄もバリエーション豊富にそろいます。
さらに奥には、約700冊がそろう「漫画コーナー」も。この本は、すべて客室への持ち込みOK。旅のパートナーとして、お気に入りの一冊を探しだすのも至福のひと時です。
モダンに生まれ変わった客室でおこもり体験
客室は全10タイプ57室。2024年のリニューアルで、和の落ち着きと洋の快適さが合わさった、おしゃれな空間に生まれ変わりました。
ロイヤルスイートルーム
なかでも、極上のおこもりステイをするなら、限定1室の「ロイヤルスイートルーム」がおすすめ。83平米もの広々としたリビングには、なんと65インチの特大テレビが!お気に入りの動画を大画面で流せば、没入感たっぷりの映画館気分を味わえます。
さらに驚くのが、ミニバーのドリンクがすべて無料というおもてなし。スパークリングワインが丸ごと1本用意されているのも、うれしいサプライズです。
「ロイヤルスイートルーム」は、最大4名まで利用可能。寝室が2つあるので、仲の良い友達同士でも、プライベートな時間を大切にしながらのびのび過ごせます。
お部屋での時間をさらに特別にするのが、専用の半露天風呂。窓を全開にすれば、心地よい風と庭園のパノラマビューが広がります。温泉ではありませんが、その分、自分好みの温度で、好きなだけバスタイムを楽しめます。
アメニティは人気ブランド「POLA」の高級ライン、ドライヤーは美容好きに話題の「ヤーマン」製。こうした細かなこだわりが、ご褒美気分を高めてくれます。
ファミリースイートルーム
他の部屋も個性的。「ファミリースイートルーム」は最大6名まで利用可能。2段ベッドがあり、まさに大人の秘密基地です。
しかもなんと、このお部屋には、人気ゲーム機「Nintendo Switch」まで完備されています。コントローラーを分けて対戦したり、大画面でワイワイ盛り上がったり。家族みんなでにぎやかな時間を過ごすのに、もってこいのお部屋です。
和モダンツインルーム
最も部屋数の多い「和モダンツインルーム」は、「辻のや」のスタンダードなお部屋。44平米と十分な広さで、窓の外には情緒ある温泉街ビューまたは庭園ビューが広がります。
ちなみに、ベッドは全室シモンズ社製。ごろんと横になれば、包み込まれるような安心感に満たされます。
お風呂好きなら、「和モダンツインルーム」に露天風呂が付いたお部屋をセレクトして。
露天風呂まわりのデッキが広く取られているのも、大きな魅力。濡れた足でも移動しやすく、滞在中の快適さをしっかり高めてくれます。
五感で楽しむアートな温泉めぐり
お部屋でひと息ついたら、いよいよお楽しみの温泉へ。館内には、大浴場が3つあり、男女入れ替え制で湯めぐりを楽しめます。
大浴場のうち2つ「鴛鴦(おしどり)の湯」と「白鳥(はくちょう)の湯」には、見上げるほど巨大な九谷焼の陶壁画が描かれています。手がけたのは、九谷焼作家として初めて文化勲章を受章した二代目・浅蔵五十吉(あさくら いそきち)氏。半年もの歳月を費やし、情熱のすべてを注ぎ込んだ傑作です。
なかでも「鴛鴦の湯」の壁画は、高さ3メートル、幅12メートルという圧巻のスケール!お湯に身を委ねれば、目に映るのは極彩色の世界だけ。全身でアートを浴びるような、この上ない高揚感を味わえます。
「鴛鴦の湯」には、見た目もキュートな、花形のジェットバスを完備。
湯船に満ちるのは、「辻のや」が守り続けてきた自家源泉。泉質はナトリウム-硫酸塩・塩化物泉で、無色透明のさらりとした肌触りです。一見するとシンプルなお湯に思えますが、塩化物泉と硫酸塩泉、2つの塩類泉がタッグを組んだ実力派。天然の化粧水のように肌をしっとり整えながら、塩分が薄い膜となって肌を包み込み、体の熱をキープ。美肌も冷え対策も、どちらもかなえてくれそうな頼もしい温泉です。
さらに、外には野趣あふれる岩造りの露天風呂も。屋根があるので、雨の日でも気兼ねなく、ゆったりと浸かれます。
もうひとつの「花廻湯(はなかいゆう)」は、湯めぐりが楽しい庭園大浴場。5つの個性豊かなお風呂を備えた、温泉好きにはたまらない空間です。
趣の異なる湯船が並ぶなか、ひときわ目を引く乳白色の「壷湯」。ほんのり甘いミルキーな湯を、プライベートな空間で独り占めできます。身を沈めた瞬間、乳白色の湯があふれ出す爽快感がたまりません。
外へ続く回廊を進んだ先には、露天風呂「さくらの湯」があります。ここは、心もお肌も癒やされるスポット。木々を眺めながらの湯浴みは、日々の忙しさで溜まった心のモヤモヤまで、すっきりさせてくれるはず。
温泉だけではなく、岩盤浴も合わせて楽しんで。40〜50度の絶妙な温かさにじんわりと包まれ、無理なくたっぷりと汗をかけば、体の芯からすっきり。
約25,000坪の庭園散策と心おどるティータイム
湯上り後は、北陸随一と言われる広大な庭園散策へ。約25,000坪の敷地には、四季折々の美しさがぎゅっと詰まっています。冬の見どころは、なんといっても加賀の風物詩「雪吊り」。その幾何学的なシルエットは、まるで計算し尽くされた現代アートのよう。北陸らしい光景に、旅情が掻き立てられます。
敷地内には、清らかな粟津川が流れています。
散策の道すがら、ぜひ足を止めてほしいのが、岩の上にたたずむ木の小屋。実はこの下から、宿自慢の温泉がこんこんと湧き出ているのです。中をのぞくと源泉を守るお札があり、「辻のや」がいかにこのお湯を大切にしてきたかが伝わってきます。
他にも、庭園は見どころいっぱい。2025年には、水盤にゆらゆらと鮮やかな花が揺れる、新たなフォトスポットも登場。色とりどりの花をバックに、フォトジェニックな写真が撮れます。
歩き疲れた足を休めに、庭が見えるラウンジへ。ここでいただくのは、乙女心くすぐる新作の「ケーキセット」(ドリンク付き1,100円)です。
プレートの上には、絵本から飛び出してきたような「穴あきチーズケーキ」や、濃厚なブラウニー、ころんとかわいらしいお麩のお菓子まで! パティシエの技と遊び心が詰まった一皿に大満足。お腹も心も、甘い幸せで満たされます。
旅の思い出を増やしたいなら、卓球にトライしてみては。利用料金は1台30分500円。夕食前の腹ごしらえ……ならぬ「腹すかし」の準備運動として楽しんでみては。
料理長の「愛」が詰まった加賀の美食体験
夕食は、厚生労働大臣表彰を受けた総料理長・田中剛氏が腕をふるう加賀会席。メニューは季節に合わせて、がらりと4回変わります。
テーブルの上に置かれていたのは、温かみのあるイラスト付きのお品書き。実はこれ、料理長が自らペンをとり、独学で描いたものなのだそう。「献立を、さらに分かりやすいように」という料理長のやさしい遊び心が、食事への期待感をさらに高めてくれます。
今回いただいたのは、1番人気の「四季会席」。旬の食材を味わい尽くす全10品の構成です。訪れた2月の献立は、北陸へ来たら一度は食べたい、ずわい蟹が主役。
いよいよ、最高の美食体験が幕を開けます!
まず運ばれてきたのは、「組肴(前菜)」の盛り合わせ。コリコリとした食感の「海鼠(なまこ)のみぞれ和え」や「あんこう南蛮漬」、「公魚(ワカサギ)カリッと揚」など、海の幸がこの一皿に凝縮しています。
この日のお造りは、本まぐろ、あおりいか、ぶり、なめら、そして甘えび。どれも角が立ち、宝石のように輝いています。
みずみずしいお造りを前にすると、石川の地酒もあわせて味わいたくなるもの。ここでは、県内の銘酒3種を少しずつ楽しめる呑み比べセット(1,700円)が用意されています。脂ののった刺身と地酒の相性は格別。ひと口ごとに、素材の旨みがいっそう引き立ちます。
中にチーズを忍ばせた「みぞれ饅頭」や、ワインの香りをまとったらっきょうを添えた「ぶり西京焼」など、伝統にさりげない工夫を重ねた一皿。和の味わいに奥行きを添える、丁寧な仕事が光ります。
ここでついに、お待ちかね!「ずわい蟹」の酢の物が登場です。
「蟹本来の繊細な風味を消さないように」という料理長のこだわりは、添えられた三杯酢の絶妙な塩梅にも。酸味の角が取れた柔らかなお酢が、甘みたっぷりの蟹の身をより一層、際立たせています。
次に運ばれてきたのは、見事なサシが入った和牛のしゃぶしゃぶです。黄金色のお出汁でさっと火を通し、料理長特製のゴマダレをたっぷりまとわせて。ひと口頬張れば、とろけるようなお肉の甘みと、ごまの香りが一気に広がります。
締めは「蟹と山菜の釜めし」。蓋を開けた瞬間に広がる香りが食欲を誘います。蟹のやさしい甘みとだしの旨み、山菜のほのかな香りが重なり、余韻まで心地よい一品です。
バーで更けゆく時間を味わう
さらなる夜のご褒美タイムは、バーでの時間。ロビーラウンジの一角には、週末限定オープンのカウンターバーがあります。選んだのは、世界を魅了するプレミアムウイスキー「山崎」のハイボール(1,300円)。シュワシュワと弾ける炭酸とともに、グラスから豊かな香りがたちのぼります。
ライトアップされた庭園を眺めながら、優雅なひと時を味わいましょう。
北陸の恵みが詰まった朝ごはん
美食の余韻は、翌朝へと続きます。「満天ノ 辻のや」の朝ごはんは、帰る直前まで心に残るおもてなしを、という思いが込められた献立です。霊峰・白山の清流に育まれた地元産こしひかりを主役に、滋味豊かな品々が並びます。
特に印象に残ったのは、能登の魚を海洋深層水で仕込んだ「自慢の一夜干し」。この日はさばが登場しました。あわせて、地魚の旨みを凝縮した「自家製めざす天」も並び、朝から土地の恵みをしっかりと味わえます。
他にも、ねっとりとした甘みが凝縮された「甘えびの昆布締め」や、金沢おでんなど、土地の味覚がそろいます。穏やかな満足感に包まれながら、一日を心地よく始められる朝食です。
歴史ある粟津温泉で、上質な湯と北陸の美食、四季折々の庭園を楽しめる「満天ノ 辻のや」。
日常を少し離れ、ゆったりと自分を整える時間を過ごしたい方におすすめの一軒です。
満天ノ 辻のや
- 住所
- 石川県小松市湯上町い18
- アクセス
- 【電車】JR「加賀温泉」駅より無料送迎バス(予約制)あり
【車】北陸自動車道「小松」I.C./「加賀」I.C.より約20分
【飛行機】「小松空港」より車で約20分 - 駐車場
- 90台/無料
- チェックイン
- 15:00 (最終チェックイン:18:00)
- チェックアウト
- 10:00
- 総部屋数
- 57室
取材・撮影・文/安藤美紀
