夏の暑さを乗り切るスタミナ食といえば、やっぱりうなぎ。静岡県浜松市はその名産地として知られ、土用の丑の日には市内の名店に長い行列ができるほどです。そんな“うなぎの聖地”浜松で誕生し、今では静岡を代表する銘菓として全国に名を馳せているのが「うなぎパイ」。うなぎの頭や骨から取っただしを加え、独特のコクと香ばしさが幅広い世代に愛されてきた逸品です。
工場見学では試食や限定品のお土産探しを満喫できるのも魅力ですが、実は「うなぎパイ」を生み出した春華堂(しゅんかどう)は、浜松のスイーツ文化を彩る個性豊かな施設も展開しています。ここでは、ぜひ訪れたい3つのスポットをご紹介します。
目次
浜松の名物菓子「うなぎパイ」を生んだ春華堂の物語
浜松銘菓「うなぎパイ」は、菓子メーカー・春華堂のロングヒット商品。
春華堂の本社がある静岡県浜松市を盛り上げたい——そんな想いから、2代目社長が名産品であるうなぎをイメージして考案したのが「うなぎパイ」。フランス菓子のパイに着想を得て、職人たちが試行錯誤を重ねた末に誕生しました。
1961(昭和36)年の発売当時、魚介類をモチーフにしたお菓子は珍しく、さらにキャッチフレーズ「夜のお菓子」がうなぎの持つイメージと絶妙に重なり、瞬く間に大ヒット。まさに“うなぎのぼり”の勢いで全国にその名を広めました。
1949(昭和24)年に創業した春華堂は、当初は甘納豆や和菓子「知也保(ちゃぼ)」を中心に展開していました。転機となったのが「うなぎパイ」の誕生です。その大ヒットをきっかけに、浜松の枠を超えて静岡を代表する菓子メーカーへと飛躍しました。
その後も挑戦を重ね、菓子づくりにとどまらない新たな取り組みを次々と展開。2005年には“職人とのふれあい”をテーマにした「うなぎパイファクトリー」を開業。いまや多くの人が訪れる、浜松市屈指の観光スポットとなっています。
さらに、2014年にはお菓子をテーマにした商業施設「nicoe(ニコエ)」を、2021年には本社にカフェとショップを併設した複合施設「SWEETS BANK(スイーツバンク)」をオープン。菓子づくりにとどまらず、浜松の街を盛り上げる存在として新たな価値を生み出し続けています。
聖地で楽しむ「うなぎパイファクトリー」工場見学
「うなぎパイ」の製造工場でもある「うなぎパイファクトリー」は、入館無料で製造工程を自由に見学できる人気スポット。館内には、オリジナルスイーツが堪能できるカフェや、限定グッズがそろうショップも併設されています。
館内のいたるところにうなぎや「うなぎパイ」をモチーフにした装飾が散りばめられており、まさに“うなぎ尽くし”の空間を満喫できます。
アクセスは車が便利で、東名高速道路・浜松西ICから約20分。公共交通機関を利用する場合はJR高塚駅からタクシーで約20分です。バスを利用することも可能ですが、最寄りの大久保停留所から徒歩30分ほどかかるため、タクシーの利用がおすすめです。
職人技が光る、うなぎパイ誕生の現場
「うなぎパイファクトリー」を訪れたら、まずは「うなぎパイ」の製造現場をのぞいてみましょう。
見学コースは3種類。自分のペースで回れる「自由見学」(無料)、製造工程を解説付きで巡る「コンシェルジュご案内付きツアー」(無料)、焼きたてのうなぎパイを味わえる「窯出しうなぎパイツアー」(1人500円)です。
「コンシェルジュご案内付きツアー」は電話で、「窯出しうなぎパイツアー」は専用ページからの事前予約が必要。特に「窯出しうなぎパイツアー」は満席になることも多いため、公式サイトをこまめにチェックしておくと安心です。
1階の見学ルートでは、長さ12メートルの窯で「うなぎパイ」が一気に焼き上がる迫力の工程や、秘伝のタレ塗りを間近で見ることができます。
生地には、うなぎの頭と骨から取っただしをパウダー状にして小麦粉やバターなどと練り込み、うなぎパイ職人がひとつひとつ生地を折り重ねていき、窯で香ばしく焼き上げ、創業当時から受け継がれる秘伝のタレをたっぷり塗って完成します。
このタレのレシピを知るのは限られた職人だけ。熟練の技と秘伝の味づくりに触れられる、貴重なひとときです。
2階では、焼き上がった「うなぎパイ」が包装から梱包へと進む様子を、上から見学することができます。機械に任せる部分は任せつつも、最終チェックは人の目で丁寧に。
こうした工程を経て生まれる「うなぎパイ」は、なんと1日に約20万本。緻密な手仕事と大量生産を両立させる仕組みに、思わず驚かされます。
うなぎパイファクトリー 工場見学
- 営業時間
- 10:00~17:30
※「コンシェルジュご案内付きツアー」は、電話(053-482-1765)にて事前要予約(受付時 9:00~17:00)
※「窯出しうなぎパイツアー」は、公式サイトから要事前予約 - 定休日
- 公式サイトの営業カレンダーにて要確認
- 料金
- [自由見学]無料
[コンシェルジュご案内付きツアー]無料
[窯出しうなぎパイツアー]1名500円(クレジットカードでの事前支払い) - 所要時間
- [自由見学]約15分
[コンシェルジュご案内付きツアー]約20分
[窯出しうなぎパイツアー]約60分 - 詳細
- うなぎパイファクトリー 工場見学コース案内
「うなぎパイカフェ」でここだけのグルメを堪能
製造工程を見学したあとは、きっと「うなぎパイ」を食べたくなるはず。2階の「うなぎパイカフェ」では、ここならではのスイーツや静岡産食材を使ったメニューが味わえます。
華やかでSNS映えするスイーツから、意外な調理法に驚かされる一皿まで多彩にラインナップ。
なかでも外せないのは、「うなぎパイの”う巻き&うざく”仕立てほうじ茶付き」(1,200円)です。うなぎの蒲焼きを卵で巻いた「うまき」に見立て、クレープで「うなぎパイ」とバナナ、アーモンドクリームを包んだ遊び心あふれるスイーツ。香ばしさと甘さのバランスが絶妙で、見た目とのギャップも面白い一品です。
スイーツだけでなく、フードメニューも豊富。「浜名湖うなぎスープカリー(サラダ付き)」(2,700円)は、浜名湖産うなぎと地元野菜のフリットにスープカレーを合わせた一皿です。添えられた「うなぎパイ」は砕いてサラダに散らせば、甘みと塩味の絶妙なアクセントに。
季節限定メニューも見逃せません。2025年9月頃まで提供される「ニョロっと!うなぎ、砂丘をのぼる 〜かばやきタレ仕立て〜」(1,200円)は、「うなぎパイ」を3本も使ったかき氷。ザクザク食感の中には濃厚ジェラートが隠れており、黒蜜をかけることで味わいが変化します。
屋外には移動販売車「うなくん号」も登場。人気の「うなぎパイジェラート」(550円)は、1.5本分の「うなぎパイ」をミルクジェラートに練り込み、さらに0.5本をトッピング。ひんやりザクザクの食感で、夏休みや週末には行列必至の一品です。
※うなくん号」は大阪・関西万博出展中のため、2025年10月までは別のワゴンで営業中
直営売店で手に入る限定商品&人気お土産
1階の直営売店には、工場で作られた「うなぎパイ」をはじめ、春華堂のお菓子やオリジナルグッズが勢ぞろい。
人気は定番の「うなぎパイ」(12本入り 1,122円)、香ばしい「うなぎパイ ナッツ入り」(12本入り 1,561円)、ナッツとハチミツを加えた「うなぎパイミニ」(10本入り 816円)など。個包装で配りやすく、家族や職場への手土産にも最適です。
さらに、生クリームやマカダミアナッツを織り込み、ブランデー入りのタレで仕上げた高級版「うなぎパイ V.S.O.P.」(10枚入り 2,083円)も人気の一品。直営店や主要駅限定でしか手に入らないレア商品です。
運が良ければ規格外を詰め合わせた「うなぎパイ徳用」(978円、ミニ489円)に出合えることも。これを目当てに訪れる人も多い人気品なので、見かけたら即ゲットを。
お菓子以外にも、「うなぎパイキーホルダー」(385円)や「うなぎパイ根付」(440円)、「オリジナル絆創膏」(10枚入り 330円)などのグッズも充実。本物そっくりのデザインで、自分用にも欲しくなるかわいらしさです。
うなぎパイファクトリー
- 住所
- 静岡県浜松市中央区大久保町748-51
- 営業時間
- 10:00~17:30
- 定休日
- 火・水曜日
※工場見学は日曜日も定休 - アクセス
- 【車】東名高速道路「浜松西」ICから車で約20分
【電車】JR「高塚」駅からタクシーで約20分 - 公式サイト
- うなぎパイファクトリー
巨大オブジェとベーカリーカフェの「スイーツバンク」
浜松駅からほど近い市街地で存在感を放つのが、春華堂が手がける複合施設 「SWEETS BANK スイーツバンク」。“家族の団らん”をテーマにした空間で、春華堂自慢のスイーツや、直営ベーカリーカフェで焼きたてのブリオッシュを味わえます。
アクセスは、車なら東名高速道路・浜松ICから約30分。公共交通機関を利用する場合は、JR浜松駅から遠鉄バスの法枝・小沢渡方面行きに乗り、春日町停留所で下車後、徒歩約6分です。
巨大オブジェが彩る、非日常のフォトスポット
「スイーツバンク」に足を踏み入れると、まずはそのユニークな空間に圧倒されます。13倍にスケールアップされたダイニングテーブルを模した建物やオブジェに囲まれ、まるで自分が小人になったかのような感覚に。
さらに、巨大なミルク瓶や、敷地内に建つ「浜松いわた信用金庫」にちなんだブタの貯金箱など、遊び心あふれるオブジェが点在しています。建物に入る前に、まずは周囲を巡ってお気に入りのスポットで写真を撮るのもおすすめです。
春華堂初のベーカリーカフェ「とらとふうせん」
「とらとふうせん」は、春華堂が手がける初のベーカリーカフェ。コンセント付きのカウンター席からゆったりとしたソファ席、半個室までそろい、モーニングからカフェタイムまで幅広く利用できます。
看板メニューは、発酵バターに卵黄、ハチミツ、生クリームをぜいたくに使った「とらんだの黄色い山型ブリオッシュ」(1斤 990円)。イートインでは、このブリオッシュを使ったサンドイッチなどを提供しています。ほんのり甘い生地がベースなので、食事にもおやつにもぴったり。
もう一つの人気商品が「とらんだのまんまるどーなつ ふわふわカスタード」(1個350円)。ブリオッシュ生地に特製クリームをたっぷり詰め込み、見た目もかわいらしい一品です。もっちりとした食感と軽やかな甘さがクセになります。
ここでしか買えない限定スイーツ&お土産
「スイーツバンク」内のショップ 「春華堂」 では、直営店で人気の定番スイーツから、ここだけの限定商品まで幅広くそろいます。
ショーケースでひときわ目を引くのは「咲クレール」(1本 324円)。エクレア生地にチョコレートや掛川抹茶、旬のフルーツをあしらったワンハンドスイーツで、季節ごとの限定フレーバーにも注目です。
限定パッケージの「うなぎパイ詰合せ SWEETS BANK 限定パッケージ」(1,956円)は、「うなぎパイ」「ナッツ入り」「V.S.O.P.」を詰め合わせたセット。
そのほか、「スイーツバンク」のモチーフをかたどった上生菓子(1個 432円)や、木いちご・マンゴー味のクッキーが入った「おかしなピギー缶 2個セット」(2,000円)など、限定スイーツも取りそろえています。
どれもつい目移りしてしまうものばかり。お土産選びの時間は、余裕を持って確保しておきましょう。
SWEETS BANK スイーツバンク
- 住所
- 静岡県浜松市中央区神田町553
- 営業時間
- 9:30〜18:00
- 定休日
- 月・火曜日
- アクセス
- 【車】東名高速道路「浜松」ICから車で約30分
【電車】JR「浜松」駅から路線バス乗車、「春日町」下車、徒歩約6分 - 公式サイト
- SWEETS BANK
食べて遊んで学べる!お菓子のテーマパーク「nicoe」
「うなぎパイファクトリー」や「スイーツバンク」と並ぶ、春華堂のもうひとつの拠点『nicoe(ニコエ)』は、お菓子の新しい文化とスタイルを発信するスイーツ・コミュニティ。食育や職育をテーマに、春華堂の職人技が光る和菓子・洋菓子の販売をはじめ、レストランや広場、子ども向けプレイグラウンドもあり、家族で一日中過ごせるスポットです。
アクセスは車なら東名高速道路の浜松西IC、または浜松浜北ICから約20分。公共交通機関の場合は、JR浜松駅から遠鉄バスの萩丘・都田・きらりタウン方面行きに乗車し、「染地台3丁目」停留所で下車後、徒歩約20分です。
※最寄りの「ニコエ・春華堂浜北工場」停留所で停車するバスは、土・日・祝日のみ運行
和×発酵の和菓子を味わう「五穀屋」
「nicoe」の中央にある「五穀屋」は、春華堂が展開する「五穀×発酵」をテーマにした和菓子ブランド。京都の町家を思わせる空間で、春華堂の原点ともいえる和菓子を中心に、趣向を凝らしたスイーツが並びます。
看板メニューの「にこだま団子」(286円)は、うるち米と黒米を使った2色の団子を、職人が目の前で香ばしく焼き上げる一品。おこげの風味と甘じょっぱいみたらしダレの相性が絶妙です。
お土産には、五穀せんべい「山むすび」(2種10枚入り 1,242円)が人気。サクッと軽やかな食感とほどよい塩味、五穀ならではの香りで、お茶請けはもちろんお酒のお供にもぴったりです。
さらに、古代米と吟醸麹を使った「糀の甘酒」(各972円)も好評。アルコール・砂糖不使用で、米本来の自然な甘みを引き出しています。縁起の良い紅白のパッケージは、贈り物にもぴったりです。
世界にひとつのチョコが作れる「cacao lab.」
「nicoe」に隣接する「春華堂 浜北工場」内の「cacao lab.(カカオラボ)」では、月1回ほど、カカオ豆からチョコレート製造までを一貫して行う「Bean to Bar(ビーントゥバー)」体験ワークショップを開催しています。
まずはカカオ豆の特徴などを座学で学び、その後に殻むき、コンチング※、テンパリング※といった製造工程を実際に体験します。
※コンチング…時間をかけてカカオマスを丁寧に混ぜ合わせることで、チョコレートをなめらかにし、味と香りを豊かにする工程のこと
※テンパリング…チョコレートを溶かして温度を調整し、カカオバターの結晶を整えることで、ツヤがあり、なめらかなチョコレートに仕上げる工程のこと
仕上げたチョコレートはオリジナルラベルを貼って持ち帰ることができ、世界にひとつだけのオリジナルチョコとして、旅の記念に。体験は「親子コース」「大人コース」の2種類が用意されています。
※体験は事前予約制。詳細は公式サイトより確認
cacao lab.
- 開催日
- 月1回程度(コースにより異なる)
- 開催時間
- 午前の回/10:00~13:00、午後の回/13:30~16:30
- 開催場所
- 春華堂 浜北工場
※集合/nicoeフロント、解散場所/nicoe内(集合時にアナウンス) - 対象年齢
- [大人コース]高校1年以上
[親子コース]小学校1年生~中学校3年生までの子どもと保護者 - 所要時間
- 2時間+準備時間
- 料金
- [大人コース]1人3,500円
[親子コース]1人3,200円 - 定員
- [大人コース]16人
[親子コース]8組(16人) - 詳細
- cacao lab.
子どもも大人も夢中になれるプレイスポット
「nicoe」の敷地内には、子どもが夢中になれる空間も整っています。
「五穀屋」のそばにある 「プレイグラウンド082」 は、浜松の伝統木材・天竜杉の間伐材を使った知育玩具が並ぶ、秘密基地のようなワクワク空間。子どもだけでなく、大人も一緒に楽しめます。
授乳室も完備されているので、小さなお子さん連れの家族も安心です。
屋外には、美しいランドスケープが広がります。
知恵の輪をコンセプトにした 「くるりの森」 の遊具では、実際に登って遊ぶことも可能。手入れの行き届いたガーデンでは、散歩をしたりピクニック気分でお菓子を食べたりと、思い思いの過ごし方ができます。
nicoe
- 住所
- 静岡県浜松市浜名区染地台6-7-11
- 営業時間
- 10:00〜18:00
- 定休日
- 月・火曜日
- アクセス
- 【車】東名高速道路「浜松西」IC、新東名高速道路「浜松浜北」ICからそれぞれ車で約20分
【電車】JR「浜松」駅から路線バス乗車、「染地台3丁目」下車後、徒歩20分 - 公式サイト
- nicoe
静岡を代表する銘菓「うなぎパイ」の聖地・浜松には、まだ知られていない見どころが数多くあります。
それぞれの施設に特色があり、1日かけてじっくり巡ればその魅力を存分に味わえます。甘くておいしい浜松スイーツ旅を、心ゆくまで堪能してみてください。
取材・文/風間千裕 撮影/水上奈保
