足元から湧く奇跡の湯と山の恵みを味わう、南阿蘇の湯治宿「地獄温泉 青風荘.」

地獄温泉 青風荘.

「地獄温泉 青風荘.」は、足元から温泉が湧き出る「すずめの湯」で知られる、南阿蘇の湯治宿です。2016年の熊本地震とその後の土砂災害で大きな被害を受けましたが、再生を経て、歴史の面影を残しながら快適に過ごせる宿として再び歩みを始めました。

複数の源泉を楽しめる湯処や半露天風呂付きの離れ客室に加え、山の恵みを生かした料理や囲炉裏でいただく朝食など、滞在の楽しみがそろっています。

 

 

湧き続ける温泉と宿の歩み

地獄温泉 青風荘.

熊本県南阿蘇村の自然に囲まれた場所にある湯治宿「地獄温泉 青風荘.」。この宿の特徴は、足元から温泉が湧き出る「すずめの湯」です。湯船の底から気泡が立ち上り、湯が自然に満ちていきます。自然に湧き出る温泉をそのまま体で感じられるのが魅力です。

 

地獄温泉 青風荘.

2016年の熊本地震とその後の豪雨による土砂災害により、宿は大きな被害を受け、長期間にわたって休業を余儀なくされました。先の見えない状況が続く中でも、変わらず湧き続ける「すずめの湯」の存在が、再生への大きな支えとなります。

「この温泉を守りたい」という、宿を継ぐ三兄弟の思いのもと復旧が進められ、2019年には「すずめの湯」が日帰り入浴として再開。さらに翌2020年には宿泊も再開され、屋号もそれまでの「清風荘」から「地獄温泉 青風荘.」へと改められました。変わらず湧き続ける温泉が、この場所の再出発を支えてきたのです。

 

地獄温泉 青風荘.

ちなみに江戸時代、この地は細川藩の直轄地として、硫黄やミョウバンの採取が行われていました。火薬の原料にもなる貴重な資源を守るため、立ち入りは厳しく制限されていたと言われています。

さらに、足元から湯や蒸気が立ちのぼる独特の景観も相まって、「地獄温泉」と呼ばれるようになったと伝えられています。

 

足元湧出の奇跡の源泉「すずめの湯」

地獄温泉 青風荘.
地獄温泉 青風荘.

「すずめの湯」が“奇跡の湯”と呼ばれる理由は、その珍しい湧き方にあります。一般的な硫黄泉は高温で湧き出すため、加水や冷却が必要になることが多いですが、ここでは入浴に適した温度の湯が足元から自然に湧き出しています。

湯船の底から直接湧く「足元湧出」のため加水や循環を行わず、生まれたての湯をそのまま楽しめます。

 

地獄温泉 青風荘.

泉質は全国的にも珍しい単純酸性硫黄温泉(硫化水素型)で、源泉温度はおよそ41〜47度です。酸性の硫黄泉は、肌を清潔に保つ働きや古い角質をやわらかくする作用があるとされ、美肌の湯としても知られています。

 

また、湯とともに感じられる硫黄の成分には血行を促す働きがあると言われ、冷えや疲れのケアにも適しています。自然の力をそのまま感じられる温泉です。

 

地獄温泉 青風荘.
地獄温泉 青風荘.

再建された「すずめの湯」の内湯は、コンクリートを基調としながらも、以前の雰囲気を感じられる落ち着いた空間へと生まれ変わりました。あわせて清潔感のある脱衣所も設けられています。さらに冷たい鉱泉も加わり、温かい湯と交互に入る温冷交代浴も楽しめるようになりました。

 

地獄温泉 青風荘.

露天風呂は、あつ湯とぬる湯の2つの湯船が用意されています。ぬるめの湯で体を慣らし、あつ湯でしっかり温まったあと、冷たい鉱泉へと移るなど、温冷交代浴も楽しめます。

 

地獄温泉 青風荘.

休憩処には自由に飲める水が用意されているので、水分補給をしながら無理のないペースで入浴と休憩を繰り返すことが可能です。温冷交代浴は自律神経を整えるとされ、心身のリラックスにもつながります。

 

地獄温泉 青風荘.
地獄温泉 青風荘.

湯をともにする人との何気ない会話も、この場所ならではの魅力のひとつ。かつては裸での混浴でしたが、再開後は湯浴み着や水着を着用するスタイルへと変わりました。誰もが気兼ねなく同じ湯を楽しめる、開かれた温泉へと生まれ変わっています(宿泊者には無料の湯浴み着が用意されています)。

 

2つの大浴場「元の湯」と「たまごの湯」

地獄温泉 青風荘.

「地獄温泉 青風荘.」には「すずめの湯」のほかにも源泉があり、敷地内に点在する湯処を巡りながら、泉質や趣の違いを楽しむことができます。

 

地獄温泉 青風荘.
地獄温泉 青風荘.

「元の湯」は、裏山にある「たまご地獄」や「元地獄」から引いた湯を使う湯処。土石流で埋まった石造りの湯船を掘り起こし、以前の雰囲気を感じられる形で再生されました。

太い梁を巡らせた空間はかつての元湯の面影を残す、趣のあるたたずまいとなっています。

 

地獄温泉 青風荘.
地獄温泉 青風荘.

「たまごの湯」は、「元の湯」の上方、かつて女性専用の「仇討(あだうち)の湯」があった場所にできた湯処。湯は「元の湯」と同じ源泉を引いていますが、コンクリートを基調とした現代的な造りが特徴です。

背後の山からの土砂災害に備えて建物の構造にも配慮がなされており、安全面にも工夫が施されています。敷地内でも見晴らしのよい場所にあり、湯に浸かりながら開けた景色を楽しめるのも特徴です。

 

地獄温泉 青風荘.

「元の湯」と「たまごの湯」は朝夕で男女が入れ替わるため、滞在中にどちらも楽しむことができます。それぞれにボディソープやシャンプー、コンディショナーも備えられ、脱衣所にはドライヤーも用意されています。

 

モダンなロビー棟から始まる滞在

地獄温泉 青風荘.

宿のチェックインは15時から。再開にあわせて、モダンなフロントロビーが新たに作られました。木の温もりと開放感を感じられる空間は、北欧と和の要素を取り入れた落ち着いた雰囲気です。

 

地獄温泉 青風荘.

ラウンジスペースも併設されており、窓の外には南阿蘇の四季折々の風景が広がります。静かな山の景色を眺めながら、ゆったりとした時間を過ごせる空間です。

 

地獄温泉 青風荘.
地獄温泉 青風荘.

フロントの斜め前には、カフェ「H_NNTO COFFEE(ホント・コーヒー)」もあります。ネルドリップのコーヒーやカプチーノ、手作りのスイーツなどを楽しめます。ラウンジやテラスで、ゆっくり味わうのもおすすめです。

 

歴史と快適性が調和する客室

地獄温泉 青風荘.

「地獄温泉 青風荘.」には、滞在スタイルや人数に合わせて選べる、趣の異なる複数の建物に客室が用意されています。本館は明治期に建てられた歴史ある建物で、熊本地震とその後の土砂災害により大きな被害を受けましたが、当時の雰囲気を残しながら現代の快適さを取り入れて再生されました。

 

地獄温泉 青風荘.
地獄温泉 青風荘.

今回宿泊したのは、本館2階角部屋の特別室「上の5」。ツインベッドルームに加え、ゆとりのある居間、トイレ、洗面所を備えた間取りで、落ち着いた時間をゆっくりと過ごすことができます。

 

地獄温泉 青風荘.

縁側や雪見障子、柱や部屋札には当時の面影が残り、風情のある空間が広がります。一方で、Wi-Fiや温水洗浄便座付きトイレなどの設備もそろい、動画配信サービスを楽しめるテレビやコーヒーメーカーも備えられています。

 

地獄温泉 青風荘.

冷蔵庫にはミネラルウォーターやビール(有料)が用意されており、湯上がりの一杯を客室で楽しめます。基礎化粧品はフロントで受け取ることができ、冬季には丹前やダウンベストも用意されています。歴史ある空間に快適さを備えているのがうれしいですね。

 

地獄温泉 青風荘.

一方、「離れ」は山や空の景色を望める高台に位置する独立した客室です。

 

地獄温泉 青風荘.
地獄温泉 青風荘.

大きな窓を開け放てば、南阿蘇の雄大な景色と澄んだ空気がそのまま室内へ。自然とひと続きになったような開放感が広がります。

 

地獄温泉 青風荘.
地獄温泉 青風荘.

「離れ」の客室には、源泉かけ流しの半露天風呂が備えられており、自分のペースでゆっくりと温泉を楽しめます。ゆったりと流れる時間の中で、静かに癒やしのひとときを過ごせるでしょう。

 

「曲水舎」で過ごす静かな時間

地獄温泉 青風荘.

敷地内には、細川藩の水舎小屋として使われていたと伝えられる建物を再生した「曲水舎」もあります。

 

地獄温泉 青風荘.

本を手に取ってくつろげるラウンジスペースが設けられており、湯上がりにゆったりと過ごせます。

 

地獄温泉 青風荘.

また、自炊ができるキッチンも併設されており、長期滞在にも対応。滞在中は本を読んだり、温泉に入ったりと、思い思いに楽しめます。

 

山の恵みを楽しむ夕食

地獄温泉 青風荘.

「地獄温泉 青風荘.」は、阿蘇の山中にたたずむ温泉宿でありながら、食事を目当てに訪れる人も多い宿。宿を支える三兄弟のうち、長男である社長はフレンチ、三男の料理長は日本料理の修業を重ねてきました。確かな技に支えられた一皿一皿が、旅の夜を豊かに彩ります。

夕食はレストラン「山竈-yamakudo-」で提供され、鴨鍋や鹿しゃぶなど、山の恵みを生かした鍋料理が人気です。

 

地獄温泉 青風荘.
地獄温泉 青風荘.

いただいた鴨鍋の会席は、食前酒の梅酒に始まり、前菜の小鉢や奥阿蘇ますのお造り、香ばしく焼き上げたヤマメの塩焼きなどが順に提供されます。

鴨鍋は、日本酒と阿蘇の薄口しょうゆをベースにした出汁に、鴨肉やつみれ、地元のきのこ、生麩、せりなどの具材がたっぷりと入った一品。鴨肉は、料理長の人脈を生かして京都から仕入れたものを使用しており、しっかりとした旨みを味わえます。

 

地獄温泉 青風荘.

鴨鍋の締めには茶そばが用意され、さらにかまどで炊いたご飯と香の物、みそ汁も提供されます。

 

地獄温泉 青風荘.

デザートには季節の甘味と、コーヒーまたは紅茶が用意されます。温泉の余韻とともに、お腹も心も満たされる夜になりました。

 

阿蘇の朝を味わう囲炉裏の朝食

地獄温泉 青風荘.
地獄温泉 青風荘.

朝食も同じく「山竈-yamakudo-」で。囲炉裏の網で卵や魚、ソーセージを焼き、海苔を炭火で軽くあぶると、香ばしい香りが広がります。湯葉まんじゅうや自家製豆腐、サラダなども並び、野菜もしっかりとれる優しい味わいの朝食です。

 

地獄温泉 青風荘.

夕食にも登場したご飯は、南阿蘇の名水で育った特別栽培米のコシヒカリを毎朝精米し、かまどで炊き上げたもの。社長自ら炭の火加減を見ながら、じっくりと蒸らして仕上げています。ふっくらとした食感と、お米本来の甘みをしっかりと味わえます。

 

地獄温泉 青風荘.

朝のご飯は、夕食とは炊き方を変え、やややわらかめに炊き上げられています。目覚めたばかりの身体にもなじむ、やわらかな口あたりが印象的です。こうした細やかな配慮にも、あたたかなもてなしが感じられます。

 

地獄温泉 青風荘.
地獄温泉 青風荘.

旬のフルーツや野菜を使ったスムージーに加え、阿蘇の自然の中で牛を育てる阿部牧場の「ASO MILK」と「飲むヨーグルト」も味わえます。濃厚でありながら後味はすっきりとしており、阿蘇ならではの恵みを感じられる一品です。

 

地獄温泉 青風荘.
地獄温泉 青風荘.

そして朝の楽しみのひとつが、備長炭で焼き上げる社長特製のフレンチトーストです。この一品は、熊本地震発生時の避難所での出会いをきっかけに生まれました。近隣のペンション兼パン店のオーナーと交わした「復活したら一緒にこの地域を盛り上げよう」という約束から、実現したものだそう。

そのパン店の天然酵母パンを2日間かけて卵液に浸し、たっぷりのバターでその場で丁寧に焼き上げるフレンチトーストは、しっかりとしたコクのある味わい。このフレンチトーストにカフェオレを合わせて、朝のひとときをゆったりと楽しめます。

 

心身をほどく、現代の湯治

地獄温泉 青風荘.

「私たちが考える湯治場とは、自然の中で心と身体を整えられる場所。湯治は本来、長期滞在で湯に浸かる文化ですが、たとえ1泊2日でも静かな環境の中でゆっくりと湯に浸かることで、日々の疲れやストレスをやわらげることができます。そうした時間を過ごせる場所でありたいという思いが、『青風荘.』には込められています」。そう語るのは、社長の河津誠氏。

 

地獄温泉 青風荘.

熱い湯に浸かり、体の芯から温まり、ゆっくりと力を抜いて休む。そして阿蘇の自然を感じながら、目の前の時間に意識を向けて過ごすひととき。自分のペースで過ごすことで心と身体を整えていきます。

そうした時間の中で、自分自身と向き合いながら気持ちをリセットしていく。これが、「地獄温泉 青風荘.」が提案する現代の湯治です。

 

地獄温泉 青風荘.

日々の忙しさから少し離れ、自分のための時間を持つことの大切さを感じられる場所。そんなひとときを、阿蘇の自然に包まれながら体験してみてはいかがでしょうか。

 

地獄温泉 青風荘.

住所
熊本県阿蘇郡南阿蘇村河陽2327
アクセス
阿蘇くまもと空港より車で約40分、九州自動車道「熊本」ICより車で約55分
チェックイン
15:00
チェックアウト
11:00
総客室数
9室
駐車場
あり/35台(無料※予約不要)

 

「地獄温泉 青風荘.」予約・詳細 取材・撮影・文/北川りさ
Article survey

お客様のご意見をお聞かせください
このページは気に入っていただけましたか?

ワクワクする旅のきっかけから現地で役に立つ情報まで、確かな情報を旅行者にお届けします。

※当ページのランキングデータ及び記事内容の無断転載は禁止とさせていただきます。
※掲載内容は公開時点のものです。ご利用時と異なることがありますのでご了承ください。
※(税抜)表示以外の価格はすべて税込価格です。場合によって税率が異なりますので、別価格になることがあります。

 
 

TOP