ここを「温泉のテーマパーク」といわずして、どこをいうのでしょう! そう驚かずにはいられない天下の大浴場が、鹿児島県霧島市にありました。
その名は「霧島ホテル」。自慢の「硫黄谷庭園大浴場」は、日本最大級の広さを誇る名湯です。
開館当初には「1,500人が同時に入浴できる」と謳われたほどのスケールで、14もの泉源を持ち、一日になんと1,400万リットルもの湯が湧き出すというから圧巻。湯けむりの向こうには噴水が立ちのぼり、熱帯植物が生い茂る光景は、まさに温泉のテーマパークです。
さらに、鹿児島の旬をぜいたくに味わえる郷土会席や、樹齢100年を超える杉がそびえる「百年杉庭園」など、見どころも満載。
想像をはるかに超える大迫力の庭園大浴場をはじめ、歴史を刻む老舗ホテルの魅力を、1泊2日の滞在記でご紹介します。
アクセス
「霧島ホテル」へは、鹿児島空港から車またはバスで約30分。
バス利用の場合は「硫黄谷」バス停で下車し、フロントへ連絡を。すぐに送迎車が迎えに来てくれます。
本土最南端に位置する鹿児島は、関東在住者からは遠い印象を持たれがち。ですが、飛行機の朝便に乗れば関東や関西から午前中には到着可能。飛行機からは車で約30分ほどと、思った以上に交通の便がよく、気軽に訪れられる温泉地です。
広々とした駐車場も完備されており、自家用車での訪問も安心。熊本や宮崎との県境が近いため、九州内からの旅行者にも人気だそう。
坂本龍馬をはじめ数々の著名人が訪れる歴史深い旅館
「霧島ホテル」は、前身の「霧島館」として1861(文久元年)に創業。160余年の歴史をもつ老舗旅館です。その歴史の中には、坂本龍馬が新婚旅行のため妻おりょうと訪れた記録が残っています。彼が心身を癒やした湯と食を、現代でも体験できるのは感慨深いもの。歴史ファン垂涎の宿としても注目です。
また、近代歌壇を代表する歌人である与謝野鉄幹・晶子夫妻も滞在しており、露天風呂には「鉄幹の湯」「晶子の湯」と名が残されています。
そのような歴史をもつ館内には、創業からの歩みをたどる「温泉歴史コーナー」があり、時代を映す貴重な資料やパネルが展示されています。「硫黄谷庭園大浴場」が営業開始した当時の新聞には「1,500人の入浴ができる日本一の岩風呂」と記され、その注目ぶりと期待の高さがうかがえます。
硫黄谷庭園大浴場
それではさっそく、ホテルの象徴といえる「硫黄谷庭園大浴場」へ向かいましょう!硫黄谷温泉を唯一引くこの大浴場は、1日1,400万リットルもの圧倒的な湯量を誇り、そのスケールはまさに温泉のテーマパーク。
ここでは、硫黄泉・明礬(みょうばん)泉・塩類泉・鉄泉という4種類の泉質を、趣向を凝らした大小さまざまな湯船で堪能できます。メインの大浴場はなんと奥行き25メートル・最深部は1.4メートルの深さ。湯けむりの中には噴水が立ちのぼっています。
大浴場は「フリーゾーン」「男性・女性専用ゾーン」に分けられています。
まずは圧巻のフリーゾーンからご紹介。
大浴場の一番奥には大迫力の滝が鎮座。
噴水のあるメインの「フリーゾーン」は混浴ですが、白濁りした硫黄泉であることに加え、1.4メートルの深さがあり、胸まで浸かった立ち湯の状態で過ごせます。水着や湯浴み着の着用はなく、女性はバスタオルを巻いて入浴していました。
さらに、毎日20:00〜21:30は女性専用の「レディースタイム」として開放されるので、どなたでも安心してゆったりと入浴を楽しめます。
フリーゾーンには、赤松風呂、ひのき風呂、黄金風呂、打たせ湯などほかにもさまざまなお風呂が。こちらはフリーゾーン入ってすぐの明礬風呂です。「これが温泉だ!」のフレーズに思わずうなずいてしまいます。
次は、女性専用ゾーンを見てみましょう。更衣室を出ると、すぐに、明礬泉、塩類泉、硫黄泉の3種の泉質を楽しめる内風呂が。サウナや水風呂も完備されています。
(同じ内容の内風呂が男性専用ゾーンにもあります)
内湯を出ると、すぐに見えるのが、硫黄泉が流し込まれている「美白の湯」。白濁のとろりとした泉質です。ほかにも、女性専用ゾーンでは、「不老の湯」「子宝の湯」など、いろいろな効能が楽しめる風呂があるのが特徴。
そのすぐ脇には、「うたせ」湯や、樹齢約350年の椎の木をくり抜いて浴槽にしたという「長寿風呂」があります。
「美白の湯」を過ぎると「子宝の湯」が。塩類泉で、肌を清浄にし、柔らかく保ってくれるといわれています。
続いて見えるのは「不老の湯」。殺菌力の強い明礬泉が引かれており、慢性皮膚病への効果が期待できるようです。
流れ込む温泉の熱気で、温室のようになっている浴場内には、雰囲気抜群の熱帯の植物が植えられています。バナナの樹は実をつけていました。
女性専用ゾーンから、フリーゾーンへ行くには「おりょうの湯」を経由します。
こちらも深さは1.2メートルほどあり、立ち湯のままフリーゾーンへ行けるので安心です。
露天風呂は男女別々での利用。男性用は「鉄幹の湯」、女性用は「晶子の湯」と、霧島ホテルを訪れいくつもの歌を詠んだ歌人・与謝野鉄幹・晶子夫妻にちなんだ名前がつけられています。
塀の向こうには霧島の山の緑を望むことのできる、開放感あふれる露天風呂です。
客室
客室の利用は15:00から。こちらは「和モダンツイン」。「霧島ホテル」は山の上に位置し、窓からは山々や、霧島の街を見下ろしたり、開放的な気分を感じられます。
「和室」タイプも人気。近くには温泉が湧出する源泉地があり、窓からは、煙が立ち上っている様子を観察することもできました。
また、フロント近くには無料で楽しめる貸出ゲームも用意。湯上がりに家族や友人と過ごす、穏やかな団らんのひとときも格別です。
百年杉庭園
およそ30万坪の面積を擁する「霧島ホテル」の敷地内には、樹齢100年以上の「霧島メアサ杉」が群生している「百年杉庭園」があります。
歩きやすい遊歩道が整備されているので、お腹を空かせるのにちょっとした散策もおすすめですよ。豊かな自然のなかでは、運が良ければシカやムササビ、テンなどの野生動物に出会えることもあるのだそう。
標高777メートル地点から始まる庭園。少し階段をのぼると、パワースポットとして知られる「硫黄谷温泉神社」が。自然の恵みに感謝しながらお参りをしてみましょう。
美しい自然のなかに囲まれていると、自然と心身が解きほぐれていくのを感じられます。ちなみに霧島メアサ杉は、花粉症の原因物質であるスギ花粉の量が少ない事でも知られているそう。
大きく息を吸って、澄んだ空気を楽しみましょう。
大浴場だけでなく、ここにも与謝野夫妻の歌碑が。約100年の時を超えて受け継がれる情景に心打たれます。
庭園のなかには、かわいらしい置物も。シカやサル、なかにはヒトまで! お気に入りの子を見つけてみてください。
夕食
お風呂でゆったり癒やされたあとは、心待ちにしていた夕食の時間。「霧島ホテル」では、鹿児島の旬の食材をぜいたくに使った郷土会席が楽しめます。
まずテーブルに並ぶのは、彩り鮮やかな前菜と食前酒、そして、鹿児島の郷土料理「酒寿司」。
酒寿司とは、酢の代わりに地酒を使用したちらし寿司で、具材には鹿児島名物のきびなごなどが使われます。口に運ぶと地酒の芳醇な香りがふわっと広がり、豊かな味わいを楽しめます。
続くお造りや土瓶蒸しは、素材の繊細な風味を引き立てる上品なお味。湯上がりの体に、じんわりと染み入るようです。
鍋物は、「黒豚軍鶏(しゃも)鍋」。軍鶏鍋は坂本龍馬が「霧島ホテル」の前身である「霧島館」に宿泊した際に喫食したといわれています。軍鶏は旨みが強くあっさりとした味わいで、鹿児島名物の黒豚と一緒に食べればみるみる元気が湧いてきます。
焼物は黒毛和牛ステーキ。テーブルの鉄板でジュウジュウと音を立てながら焼き上げられ、立ちのぼる香ばしい匂いに食欲をそそられます。サシの入った肉は、口のなかでとろけるような甘みとコクが広がり、思わず笑みがこぼれるおいしさ。
締めの炊き込みご飯やデザートにも、地元の旬がたっぷり。訪れた秋シーズンのデザートは、栗の渋皮煮を添えた柿のティラミスでした。霧島の自然に抱かれながら味わう夕餉は、まさに五感を満たす至福のひとときです。
ラウンジ
食後は「ラウンジ森」に立ち寄ってみましょう。フリーのソフトドリンクを飲みながら、ライトアップされた百年杉庭園を眺めることができます。
幻想的な風景に思わずうっとり。夢見心地なひとときを過ごすことができるでしょう。
ラウンジで落ち着いたら、もう一度庭園大浴場へ。昼とはまた違う雰囲気が楽しめます。
赤松風呂はなんと、大浴場の奥に建つ楼閣の中にあるというユニークな造り。広大な浴室に、まるで離れのようにたたずむその姿は圧巻です。
また、明礬泉のひのき風呂も風情たっぷり。鉄分を多く含む「黄金風呂」に浸かれば、湯ざわりの違いに驚くはず。体の芯までぽかぽかと温まり、きっと今夜はぐっすり、いい夢が見られるでしょう。
朝食
朝食は霧島の山々を身近に感じられる「ホールアゼリア」で。ビュッフェ形式で楽しむことができます。
鹿児島の名物や郷土料理を目いっぱい楽しめる品ぞろえは、この一食で鹿児島グルメを経験し尽くしてしまえるのではと感じられるほど。ビュッフェとは思えないほどの、黒豚豚骨煮の大きさにもびっくり!
鹿児島の郷土料理を集めた薩摩の食卓のコーナーには、黒豚キャベツ炒め、黒豚豚骨煮、きびなごの一夜干し、きびなごの梅香揚げなどが並びます。
なかでも、黒毛和牛メンチカツ・霧島黒豚メンチカツの食べくらべは注目。上品な脂身の旨みが特徴の霧島黒豚は、まさに地元を代表する味。霧島名産「豚みそ」につけて食べるのもおすすめです。
鹿児島のおもてなし料理「鶏飯(けいはん)」は自分で作ることができます。鶏飯とは、ご飯の上に、錦糸卵、刻みネギ、干し椎茸、海苔、ほぐしたゆで鶏などをのせ、たっぷりの鶏ガラスープをかけていただく郷土料理。やさしい味わいで旅で疲れた体にしみわたります。
人気の甘味は、もち米を使った郷土の甘味「あくまき」。わらび餅のような見た目ですが、味わいはまったくの別物。プルプルした触感が病みつきに! ぜひ一度体験してみてください。名産霧島茶を使ったプリンも用意されていました。
もちろん、郷土料理だけでなく洋食も充実。お気に召すまま、お好きなだけどうぞ。
紡がれた歴史と、霧島の雄大な自然が調和する「霧島ホテル」。ここでは、まるで時の流れがゆるやかにほどけていくような、唯一無二の温泉体験が待っています。湯けむりに包まれた大浴場、地の恵みを生かした美食、そして心を癒やす百年杉庭園の風景……。そのすべてが心温まる思い出となることでしょう。思った以上にアクセスも快適。
次のお休みは、ふと日常を離れて、心と体を温める霧島の旅へ出かけてみませんか。
霧島ホテル
- 住所
- 鹿児島県霧島市牧園町高千穂3948
- チェックイン
- 15:00 (最終チェックイン:19:30)
- チェックアウト
- 10:00
- アクセス
- JR日豊本線「霧島神宮」駅から車で約25分/鹿児島空港から車で約30分
- 駐車場
- 100台/無料
取材・撮影・文/大川祥子
