大ヒット映画『国宝』のロケ地を巡る京都旅 ー 大役を演じた舞台や悪魔と契約した神社も

映画『国宝』ロケ地

邦画実写作品として、国内興行収入の最高記録に輝いた映画『国宝』。その大ヒットは記憶に新しく、2025年6月の公開から半年以上たった今も作品の余韻は広く語られています。

歌舞伎の世界を舞台に、2人の青年が芸に生きる姿を描いたこの作品は、関西各地で撮影が行われました。京都を中心に、『国宝』の撮影に使用されたロケ地をご紹介します。京都観光とあわせてロケ地を巡り、映画の世界観に浸ってみてはいかがでしょうか。

 

 

喜久雄と俊介が2人で挑んだ大舞台「南座」

映画『国宝』ロケ地(南座)
画像提供:松竹

『国宝』のロケ地といえば、劇場「南座(みなみざ)」を真っ先に思い浮かべる人も多いはず。400年以上の歴史を持つ日本最古の劇場で、歌舞伎発祥の地と言われる四条河原のたもとにあります。

鴨川沿いに立っており、京阪電鉄・祇園四条(ぎおんしじょう)駅より徒歩すぐ、阪急電鉄・京都河原町(かわらまち)駅からも西へ徒歩約3分と、ロケ地巡りのスタートにもぴったりの立地です。

劇中では吉沢亮さん演じる喜久雄(きくお)と、横浜流星さん演じる俊介(しゅんすけ)が、人生で初めて挑む大舞台として登場します。

映画『国宝』ロケ地(南座)

建物は1929(昭和4)年に建てられた鉄筋コンクリート造で、国の登録有形文化財に指定されています。

江戸時代の芝居小屋の伝統を受け継ぎつつも、昭和初期造の建物は桃山様式で華やか。桃山様式とは、安土桃山時代に発展した建築様式で、豪華な装飾や堂々とした構え、曲線美を描く屋根の装飾「唐破風(からはふ)」などが大きな特徴です。寺社建築を思わせる風格がただよっています。

映画『国宝』ロケ地(南座)
※2026年2月撮影

外観で目を引くのが、南座のシンボルともいえる直径約120cmの大提灯。写真を撮る際は、通行人や入場列に並んでいる人たちの邪魔にならないよう配慮しましょう。

映画『国宝』ロケ地(南座)
画像提供:松竹

「南座」は、外から眺めるだけでも十分見応えがありますが、内観にも注目ポイントが満載。基本、劇場内部には公演チケットがないと入れないため、気になる演目の観劇とあわせて見学するのもおすすめです。

映画『国宝』ロケ地(南座)
 画像提供:松竹

劇場へ足を踏み入れると、天井の高さと豪華な内装に圧倒されます。スクリーン越しに見た舞台を実際に目にすると、花道の長さや客席との距離感までがはっきりと分かり、舞台に立った喜久雄と俊介の緊張感がより現実味をもって迫ってきました。

映画『国宝』ロケ地(南座)
 画像提供:松竹

客席数は約1,082席あり、歌舞伎をはじめとする多彩な公演が行われています。とりわけ、東西の歌舞伎俳優が一堂に会し、毎年12月に行われる「吉例顔見世興行(きちれいかおみせこうぎょう)」は京都の冬の風物詩にもなっています。

映画『国宝』ロケ地(南座)
画像提供:松竹

さらに、夜のライトアップされた南座も素敵なので、旅の最後に立ち寄るのも良いですね。

なお、2026年4月25日~5月6日には「南座 春の舞台体験ツアー」、8月2日~23日には「南座 夏の舞台体験ツアー」を実施(有料)。 「花道」「迫り」「廻り舞台」など、江戸時代に日本の芝居小屋で発明された歌舞伎劇場特有の舞台機構を実際に体験できる貴重な機会となります。詳細やチケット購入については公式サイトをチェックしてください。

南座

住所
京都府京都市東山区四条大橋東詰 
アクセス
京阪電鉄「祇園四条」駅からすぐ、阪急電鉄「京都河原町」駅から徒歩約3分 
公式サイト
松竹 南座

 

喜久雄と俊介が出会うシーンに登場「先斗町歌舞練場」

映画『国宝』ロケ地(先斗町歌舞練場)

南座から北へ約5分歩いた先には「先斗町歌舞練場(ぽんとちょうかぶれんじょう)」があります。京都の花街・先斗町にある歴史ある劇場で、舞妓や芸妓たちの華やかな舞台を間近で楽しめるのが魅力です。

劇中では大阪の「浪花座」として、少年時代の喜久雄が俊介の母・幸子と共にハイヤーに乗って訪れた場所として登場します。また、この「浪花座」の楽屋で喜久雄と俊介は出会いました。

映画『国宝』ロケ地(先斗町歌舞練場)

通常、内部は非公開になっているため、外観のみ見学可能です。

館内へ入れるのは、春に開催される「鴨川をどり」と、秋に開催される「水明会」の期間中の年2回のみ。どちらも美しい京舞や唄、三味線の演奏など、伝統芸能を一度に堪能できる行事です。客席と舞台の距離が近く、芸の細やかな表情や所作までしっかり観られます。詳細は、公式サイトをチェックしてみてください。

映画『国宝』ロケ地(先斗町歌舞練場)

取材時は、期間外でしたが特別にエントランスを見学させてもらいました。

ここは、渡辺謙さん演じる花井半次郎の代役を喜久雄が任され、その芝居を目の当たりにした俊介が、柱にもたれて打ちひしがれるシーンが撮影された場所です。

半次郎の息子である俊介が大役を継ぐと誰もが思っていたなか、半次郎は喜久雄の実力を見極め、あえて別の決断を下します。俊介自身も喜久雄の実力を理解しているからこそ、その瞬間は悔しさだけでは語れません。2人の立場や距離が静かに変わり始める、物語の重要なシーンのひとつです。

映画『国宝』ロケ地(先斗町歌舞練場)

2人が歩いた玄関ホールの階段にも、注目ポイントが。

映画『国宝』ロケ地(先斗町歌舞練場)

実はこの中に1枚だけ、意図的に逆向きにタイルが貼られています。

諸説ありますが、ここには「いつまでも完成させない」という想いが込められているのだそう。完成したものは、あとは壊れていくのみ。だからこそ、あえて未完の状態を残し、建物を完成形にしないという考え方が反映されているといわれています。

さらに、芸の道はどこまでいっても完成することがなく、常に磨き続けるものだという意味も重ねられています。内部を見学した際には、探してみてください。

映画『国宝』ロケ地(先斗町歌舞練場)

先斗町歌舞練場の見どころは、内観だけにとどまりません。1927(昭和2)年、近代建築の主流がレンガ造りからタイルへと移行した頃に建てられたこの建物は、大阪松竹座や東京劇場を設計した劇場建築の名手・木村得三郎氏が手掛けました。

映画『国宝』ロケ地(先斗町歌舞練場)

花や植物をあしらった宝相華(ほうそうげ)文様のレリーフタイルや幾何学模様の窓など、100年近い時を経た今でもモダンに感じられる名建築です。

先斗町歌舞練場

営業時間
「鴨川をどり」「水明会」などの公演時以外は内部非公開
住所
京都府京都市中京区先斗町通三条下ル
アクセス
京阪電鉄「三条」駅から徒歩約3分

▼周辺の観光情報

 

当時の稽古場がそのまま残る「上七軒歌舞練場」

映画『国宝』ロケ地(上七軒歌舞練場)

「上七軒歌舞練場(かみしちけんかぶれんじょう)」は、北野天満宮の東側にある、京都最古の花街・上七軒の中心施設。芸妓や舞妓が日頃の稽古や公演を行うための劇場です。

映画『国宝』ロケ地(上七軒歌舞練場)
画像提供:上七軒歌舞練場

劇中では喜久雄たちの稽古風景や、半次郎の代役を務める喜久雄の姿を客席から見つめる俊介と、春江のシーンなどのロケ地として登場します。

高畑充希さんが演じる春江は、喜久雄の幼馴染。喜久雄と俊介の2人のそばに寄り添った重要人物の1人です。

映画『国宝』ロケ地(上七軒歌舞練場)
画像提供:上七軒歌舞練場

上七軒歌舞練場は、明治時代に建てられた木造建築で、外観は伝統的な和風建築様式。

映画『国宝』ロケ地(上七軒歌舞練場)
画像提供:上七軒歌舞練場

内観は舞台や大広間、庭園などがあり、歴史と花街文化の趣を間近に感じられる優美な空間です。こちらも、内部は公演やイベント時以外は非公開となっています。

映画『国宝』ロケ地(上七軒歌舞練場)
画像提供:上七軒歌舞練場

毎年、春には「北野をどり」、秋には「寿会(ことぶきかい)」など、伝統舞踊の公演が開かれます。夏には「上七軒ビアガーデン」も開催されるので、ぜひチェックしてみてください。

映画『国宝』ロケ地(上七軒歌舞練場)
画像提供:上七軒歌舞練場

なかでも、「北野をどり」期間中の「上七軒歌舞練場」はとっても華やかで、非日常に誘われるような特別な雰囲気をまとっています。

上七軒歌舞練場

営業時間
公演外は内部非公開
住所
京都府京都市上京区上七軒
アクセス
京福電気鉄道「北野白梅町」駅から徒歩約10分
公式サイト
上七軒歌舞練場

 

喜久雄が“悪魔と取引”したあの神社「光盛大明神」

映画『国宝』ロケ地(光盛大明神)

上七軒歌舞練場のすぐ近くには、「光盛大明神(みつもりだいみょうじん)」もあります。ここでは、喜久雄が演技力の上達を願って参拝する場面が撮影されました。

参拝後、「神さん(神様)に仰山(ぎょうさん)お願いごとするんやな」と話しかけてきた娘に対して、喜久雄が返した「神様と話してたんとちゃうで、悪魔と取引してたんや」という台詞が、強く印象に残るシーンです。

映画『国宝』ロケ地(光盛大明神)

光盛大明神は、現実世界でも芸能関係者に信仰されている神社で、芸の上達を祈願しに訪れる芸妓さんや舞妓さんも多いのだとか。

映画『国宝』ロケ地(光盛大明神)

裏路地にひっそりとたたずんでいるので、見逃さないように歩きましょう。

光盛大明神

参拝時間
24時間
定休日
なし
住所
京都府京都市上京区真盛町
アクセス
京福電気鉄道「北野白梅町」駅から徒歩約10分

 

滋賀・兵庫の『国宝』ロケ地

『国宝』の撮影は、京都だけでなく兵庫県や滋賀県でも行われました。

 

【滋賀】撮影に使われたセットの一部が残る「びわ湖大津館」

映画『国宝』ロケ地(びわ湖大津館)

滋賀県の「びわ湖大津館」は、1934(昭和9)年、外国人観光客誘致のために建設された滋賀県初の国際観光ホテル「旧琵琶湖ホテル本館」を活用した施設です。劇中では歌舞伎座「日乃本座」として登場しました。

京都駅から乗り換えなしで、約30分で行けるため、京都のロケ地とあわせて巡ることができます。

映画『国宝』ロケ地(びわ湖大津館)

「東京歌舞伎座」と同じ建築事務所が設計を手掛けており、両方の施設の雰囲気が近いことからロケ地に選ばれたのだとか。

この1階ロビーで、喜久雄とその妻・彰子、上方歌舞伎の当主であり彰子の父でもある千五郎の3人が対峙する緊張のシーンなどが撮影されました。

映画『国宝』ロケ地(びわ湖大津館)

撮影にはエキストラを200名以上起用し、2日間の大掛かりなロケが行われたそう。原作の「日乃本座」を忠実に再現するため、建物内外に細部までこだわった美術装飾が施されました。

映画『国宝』ロケ地(びわ湖大津館)

館内には、今でも撮影に使用された花柄のじゅうたんの一部が記念に残されています。

映画『国宝』ロケ地(びわ湖大津館)
映画『国宝』ロケ地(びわ湖大津館)

柱には、「喜久雄が触れたあの柱」という案内札も貼られていました。ここに触ることも、柱との記念撮影もOKなので、映画ファンもよく訪れるそうです。

映画『国宝』ロケ地(びわ湖大津館)

1階には琵琶湖が一望できるレストラン「ベル ヴァン ブルージュ」も。刻々と移ろう琵琶湖の表情を眺めながら、クラシカルで優雅な空間でカフェやランチ、本格的な創作フレンチを味わえます。聖地巡礼のついでに立ち寄ってみては。

びわ湖大津館

営業時間
9:00~21:00(最終受付19:00)
【レストラン】11:00~14:00、ディナー(予約制)17:00~21:00(LO.19:30)
定休日
臨時休業あり
入館料
無料
住所
滋賀県大津市柳が崎5-35
アクセス
【電車】JR「大津」駅からバスで「柳ヶ崎」停留所下車後、徒歩約3分/JR「大津京」駅から徒歩約20分
【車】名神高速道路「大津」ICより約10分
公式サイト
びわ湖大津館

▼大津周辺の観光情報

 

【兵庫】楽屋シーンの追体験も!近畿最古の芝居小屋「出石永楽館」

映画『国宝』ロケ地(出石永楽館)
画像提供:出石永楽館

兵庫県でロケ地として利用されたのは、豊岡市にある「出石永楽館(いずしえいらくかん)」。1901(明治34)年に開館した近畿最古の芝居小屋です。

伝統的な舞台装置や楽屋が劇中の歌舞伎シーンに完璧にマッチしたため、ロケ地に選ばれたのだとか。主演の2人がクランクインした場所でもあります。

映画『国宝』ロケ地(出石永楽館)
画像提供:出石永楽館

平成の大改修により、芝居小屋としてもっとも華やかだった大正11年頃の姿を忠実に復原。レトロな看板や落書きや傷などは当時のまま残しており、とっても味わい深い空間になっています。ここで、喜久雄と俊介が演目「二人藤娘」を演じるシーンが撮影されました。

映画『国宝』ロケ地(出石永楽館)
画像提供:出石永楽館

出石永楽館で撮影されたのは主に、喜久雄と俊介の楽屋シーン。映画に使用された鏡台が、現在も展示されています。なんと、この楽屋は実際に座ることも可能。喜久雄や俊介になりきって腰を下ろしてみてください。

また、「二人藤娘」に登場した藤の持ち枝など、“なりきり”グッズの貸出もあり、舞台で記念撮影することもできます。

映画『国宝』ロケ地(出石永楽館)
廻り舞台(画像提供:出石永楽館)
映画『国宝』ロケ地(出石永楽館)
花道下(画像提供:出石永楽館)

そのほか館内では、廻り舞台や奈落、花道といった現在の公演でも使われている貴重な劇場機構の見学も。公演や貸館のない営業日のみ見学可能です。詳しくは公式サイトの開館カレンダーをチェックしてみてください。

出石永楽館

営業時間
9:30~17:00(最終入館16:30)
定休日
木曜、12月31日、1月1日
見学入館料
大人 400円、学生 240円、中学生以下 無料
住所
兵庫県豊岡市出石町柳17-2
アクセス
【電車】JR「豊岡」駅からバスで「出石(いずし)」停留所下車後、徒歩約3分
【車】北近畿豊岡自動車道「八鹿氷ノ山(ようかひょうのせん)」ICから約20分
公式サイト
出石永楽館

▼出石周辺の観光情報

 

映画『国宝』のロケ地を巡りながら、心に残ったシーンをたどることで、新たな発見や追体験ができます。実際に劇場で歌舞伎などを観劇するのもおすすめです。京都の定番名所とあわせて巡ってみてはいかがでしょうか。 

取材・文/加藤 絵里子 撮影/玉川 美保

Article survey

お客様のご意見をお聞かせください
このページは気に入っていただけましたか?

ワクワクする旅のきっかけから現地で役に立つ情報まで、確かな情報を旅行者にお届けします。

※当ページのランキングデータ及び記事内容の無断転載は禁止とさせていただきます。
※掲載内容は公開時点のものです。ご利用時と異なることがありますのでご了承ください。
※(税抜)表示以外の価格はすべて税込価格です。場合によって税率が異なりますので、別価格になることがあります。

 
 

TOP