東京・浅草からほど近く、隅田川のほとりに位置する蔵前は、古くから職人の街として親しまれてきたエリアです。近年では、築年数を重ねたビルや倉庫が、カフェや雑貨店へと生まれ変わり、クリエイターや手仕事に携わる人々が集まる街へと進化しています。
そんな蔵前の多彩な魅力をご紹介。若い世代や観光客からも注目が集まるものづくりの街に出かけましょう。
目次
歴史ある商いの街に、新しい感性が息づく蔵前
江戸時代、幕府の米蔵である「浅草御蔵(あさくさおくら)」が並び、隅田川を使った物流の拠点として活気を見せていた蔵前。問屋や職人が集まり、商いの街としてにぎわっていたそうです。
今もその時代の名残で、老舗の問屋やものづくりの工房が街のあちこちに見られます。
最寄りは都営浅草線・都営大江戸線の蔵前駅です。両路線は同じ駅名ですが場所が少し離れており、地下通路での乗り換えはできません。そのため、乗り換え時には地上を歩いて5分ほどかかりますが、その道中にも個性豊かなショップやカフェが点在しており、街歩きも楽しめます。
カカオの香りに誘われて。「ダンデライオン・チョコレート(蔵前)」
都営浅草線・蔵前駅から徒歩約3分、緑に囲まれた静かな公園の向かいにあるのが「ダンデライオン・チョコレート ファクトリー&カフェ蔵前」。サンフランシスコ発のクラフトチョコレートブランド「ダンデライオン・チョコレート」の日本第1号店で、工房・ショップ・カフェが一体となったお店です。
築60年の倉庫をリノベーションした店内に一歩足を踏み入れると、ふわりと広がるカカオの香りに包まれます。
カカオ豆の選別から手がけるチョコレート工場
入口の左側には、カカオ豆がぎっしり詰まった麻袋が置かれていました。ここで、豆の選別をしているそう。
さらに、1階奥にある「チョコレートファクトリー」では、カカオ豆を焙煎し、外皮を取り除き、ペースト状にすりつぶすところから成形や温度調整(テンパリング)まで、チョコレートが完成するまでのすべての工程が行われています。
スイーツとともに過ごす、落ち着いたカフェタイム
階段を上がると、天井が高く開放感のあるカフェスペースが広がっています。
窓の外には公園の木々が見え、春には桜、秋には紅葉と、季節ごとに異なる景色を望めます。
また、2階には大きな「シンボルテーブル」も。天板がガラス張りになっていて、なんとここから1階のファクトリーの様子を見下ろせます。
チョコレートが作られていく様子を眺めながら、思い思いの時間を過ごしてみてください。
カフェメニューは、ホットチョコレートやスイーツ、季節限定品など、どれも魅力的なラインナップ。
取材日は、5種類のスイーツを食べ比べできる「シェフズテイスティング」(2,300円)を注文しました。一皿ごとに異なる国のカカオ豆を使用しているため、産地による風味の違いをはっきりと感じられます。
印象的だったのは、カカオの果肉(カカオパルプ)から作られたゼリー「ジュレ・ド・カカオフルーツ」。ほのかに甘酸っぱく、フルーティーで、口の中に幸せな余韻が残ります。
お店の味を自宅でも楽しめる、特別なお菓子
1階のショップで販売されているのは、ちょっとしたプレゼントや自分へのご褒美にぴったりのお菓子たち。
一押しは、チョコレートバーを食べ比べできる「5grams」(2,800円)。原材料はカカオ豆ときび糖だけとシンプルで、産地ごとに異なるカカオの個性や風味を堪能できます。
「ニブトフィーチョコレート」(2,900円)は、売り切れが続いたこともある人気商品。サクっとしたバターキャラメルの食感と、ほのかな塩味のバランスが絶妙で、思わずもう一枚と手が伸びてしまう味わいです。
ダンデライオン・チョコレート ファクトリー&カフェ蔵前
- 住所
- 東京都台東区蔵前4-14-6
- 営業時間
- 10:00~19:00
- 定休日
- 不定休
- アクセス
- 都営浅草線「蔵前」駅から徒歩約3分
- 公式サイト
- ダンデライオン・チョコレート ファクトリー&カフェ蔵前
手仕事の魅力が詰まった文具店「カキモリ」
蔵前で15年近く愛され続ける文具店「カキモリ」は、「ダンデライオン・チョコレート ファクトリー&カフェ蔵前」から西へ6分ほど歩いた場所にあります。
店内にはノートや万年筆、便箋など、“書くこと”の楽しさを感じられる文具が勢ぞろい。
中でも人気なのは、表紙や用紙を自分の好みに合わせて選べるオーダーノートや、実際に書き心地を試しながら選べるペンです。書く時間をより楽しめる工夫が詰まったアイテムがそろっています。
カラフルなインクやかわいらしい便箋を眺めていると、誰かに手紙を書きたくなったり、今日の出来事を日記に残したくなったり、自然とペンを取りたくなる気持ちになりますね。
素材選びから楽しむ、オーダーノート作り
「カキモリ」では、世界にひとつだけのオリジナルノートを作ることも可能です。実際に、オーダーノート作りを体験してみました。
まず、ノートのサイズをB5またはB6から選びます。次に、表紙と裏表紙をセレクト。紙・布・革などさまざまな素材があり、選ぶ素材によってノートの印象や価格が大きく変わります。
中紙は、罫線・方眼・無地など好みに合わせて選択可能。紙は束ごとに組み合わせることができ、4束ほど選ぶと適度な厚みになり、使いやすいノートに仕上がります。
最後にリングや留め具などのパーツを選べば、スタッフがその場で丁寧に製本してくれ、自分だけのノートが完成します。
素材の種類が豊富で迷ってしまうため、じっくり選びたい人は時間に余裕をもって訪れるのがおすすめです。土・日・祝日の体験は事前予約制、平日は予約不要ですが、混み合う場合は待ち時間が発生することもあります。
「カキモリ」のノート作りに使われる紙や表紙には、地元の老舗問屋や町工場、製紙会社とのコラボレーションによって生まれたものも。ものづくりの街・蔵前らしく、地域の職人たちとともに新しい価値を生み出しています。
人気の柄や素材は売り切れてしまうこともあるのだとか。世界に一冊だけのノート作りを、ぜひ体験してみてください。
カキモリ
- 住所
- 東京都台東区三筋1-6-2 1F
- 営業時間
- 11:00~18:00
- 定休日
- 月曜日(祝日の場合も休み)
- アクセス
- 都営浅草線「蔵前」駅から徒歩約6分
- 公式サイト
- カキモリ
世界の絵本と物語が集まる古書店「Frobergue」
都営浅草線・蔵前駅から徒歩約2分、メインストリート沿いに建つ築70年のタイル張りの建物が「ウグイスビル」。個性あふれるクリエイターのお店が集まり、感度の高い人々が集まる人気スポットです。
その1階には、温もりを感じる木の扉が印象的な「Frobergue(フローベルグ)」があります。店主がヨーロッパ各国をめぐって直接買い付けた洋書の絵本を中心に、国内では珍しい本に出合える古書店です。
19世紀に刊行された希少な絵本から、2000年代以降の比較的新しい作品まで、さまざまな時代の本がずらり。まるで海外の本屋に迷い込んだようなワクワクする感覚に包まれます。
国内外からの観光客や、子どもへのプレゼントを探す人はもちろん、「自分用に絵本を選びたい」と訪れる大人も多いそうです。
国やジャンルを越えて出合える、本の世界
本のラインナップは、児童書や洋書絵本だけでなく、文学、詩、芸術書、SF、エンターテインメント小説まで幅広くそろっています。
美しい装丁やイラストに魅せられてふと足を止めてしまう、そんな一冊と出合えるはずです。
店内の一角では、絵本作家や画家、イラストレーターによる個展も定期的に開催されているので、訪れるたびに新しい発見がありますよ。
時間を忘れて過ごしたくなるような、そんな古書店を一度、訪れてみてください。
Frobergue(フローベルグ)
- 住所
- 東京都台東区蔵前4-14-11 ウグイスビル101
- 営業時間
- 12:00~18:00
- 定休日
- 水曜日 ※火曜日不定休あり
- アクセス
- 都営浅草線「蔵前」駅から徒歩約2分
- 公式サイト
- 古書 Frobergue
自分だけの香りを作る、調香体験スポット「kako(家香)」
同じくメインストリート沿いの、蔵前交差点のすぐ目の前にあるのは「kako(家香)」。ここでは、エッセンシャルオイルを使って、自分だけのホームフレグランスを調香することができます。
香りを重ねながら、自分の感覚と向き合う時間
4つの香りのグループからそれぞれ1種類を選び、一滴ずつ調合して自分だけの香りを作ります。
用意されているのは、自然由来の素材から抽出したエッセンシャルオイル。トータルビューティーブランド「OSAJI」が監修したオリジナルブレンドです。一滴ずつ試しながら調整し、お気に入りの比率が決まったら、お店の人へオーダーしましょう。
完成した香りはスプレーやオイルとして仕上がり、30分ほどで受け取れます。体験時に調香した香りは、お店側でも記録を残してくれているので、後日、同じものをリピートすることも可能です。
お店の人曰く、ほんの数滴の違いで香りの印象が大きく変わるため、調香にはその人らしさが自然と表れるそう。相手のことをイメージしたフレグランスを作って、プレゼントするのも良いですね。
ホームフレグランスの調香体験は、公式サイトから予約可能です。人気の体験なので、行きたい日が決まったら、早めの予約をおすすめします。
kako(家香)
- 住所
- 東京都台東区蔵前4-20-12 精華ビル1F
- 営業時間
- 11:00~18:30
- 定休日
- 月曜日(祝日の場合は翌日休み)
- アクセス
- 都営浅草線「蔵前」駅から徒歩約2分
- 公式サイト
- kako (家香) OSAJI 蔵前店
屋上まで楽しめる、街に開かれたカフェ「ENCAFE」
都営浅草線「蔵前駅」A2出口すぐの場所にあるのが、ガラス張りのフロア1~3階と屋上のすべてをカフェとして営業する「ENCAFE」。通りに面した大きな窓からやわらかな光が差し込み、フロアごとに異なる雰囲気を楽しめるのが特徴です。
テイクアウトを楽しむ、開放的な屋上
1階はテイクアウト専門で、自家製のドーナツやクロワッサン、スイーツなど、思わず手に取りたくなるメニューが盛りだくさん。
3Fには自家焙煎機があり、丁寧に焙煎されたこだわりのコーヒー豆も購入可能です。
外に出てみると、階段下の床に屋上へ案内する足跡が描かれていました。
上っていくと、広々とした屋上が広がっています。1階でテイクアウトしたメニューをここで味わうことも可能です。開けた空の下、蔵前の街を眺めながらまったり過ごすのも良いですね。
家族でも仕事でも使いやすいカフェ空間
2階と3階はカフェスペースになっており、過ごし方に合わせてフロアを選ぶことができます。
2階は、温かみのある木のフロアに小上がりが設けられていて、子ども連れも安心してくつろげる設計。おむつ替えスペースも完備されており、ファミリーでの利用にもぴったりです。
3階はテレワークOK。平日は電源も用意されているので、集中して作業したい時に最適。静かな雰囲気の中で、おいしいコーヒーやスイーツを味わえます。
取材時のランチには、「サバサンド」(1,350円)をいただきました。脂ののったジューシーな焼きサバに、粒マスタード・にんにく・しょうゆを合わせた特製ソースがよく合います。
表面を香ばしく焼いたパンとの相性も良く、食べ応えのある一品です。セットのポテトもサクサクで、止まらなくなるおいしさでした。
また、Tシャツや缶バッジなどのオリジナルグッズも販売されており、気軽なお土産選びにもぴったりです
ENCAFE
- 住所
- 東京都台東区蔵前2-6-2
- 営業時間
- 【1F】8:00~19:30
【2F】9:00~19:00(L.O.18:00)
【3F】月~金/9:00~17:00(L.O.16:30)、土・日・祝日/10:00~18:00(L.O.17:30) - 定休日
- なし(年末年始休業あり)
- アクセス
- 都営浅草線「蔵前」駅から徒歩すぐ
- 公式サイト
- ENCAFE
マスキングテープの魅力が詰まった「mt lab.」
大江戸線・蔵前駅のそばにも見逃せないスポットがあります。A5出口から浅草方面へ5分ほど歩いた先にある、「mt lab.(エムティーラボ)」。カラフルな外観が目印です。
老舗メーカーが発信する、マスキングテープの世界
このお店を運営しているのは、1923(大正12)年に岡山県倉敷市で創業した老舗企業・カモ井加工紙株式会社。
もともとはハエとり紙の製造からはじまり、のちに粘着テープ製品へと事業を拡大。100年以上にわたり技術を磨いてきました。ものづくりの街として知られる蔵前の魅力に引かれ、2018年にこの地で店舗をオープンしています。
店内には色とりどりのマスキングテープが美しく並び、まるで小さなアートギャラリーのよう。強粘着タイプやテープの幅計り売りなど、ここにしかない限定アイテムも豊富にそろっています。
倉敷本社での工場見学やアートコンテスト、全国各地でのイベント開催などを通して、マスキングテープの楽しさを多彩な形で伝えているブランドで、「mt lab.」店内では定期的に企画商品を入れ替え。思わず手に取りたくなる商品が並び、時間を忘れて楽しめます。
mt lab.
- 住所
- 東京都台東区寿3-14-5
- 営業時間
- 10:00~12:00、13:00~19:00(12:00~13:00は休憩のためクローズ)
- 定休日
- 不定休
- アクセス
- 大江戸線「蔵前」駅から徒歩約5分
- 公式サイト
- mt lab.
ものづくりの文化が息づく街・蔵前は活気と温かさにあふれ、歩くだけでも新しい発見に出会える場所です。カフェでひと休みしたり、雑貨や文具を眺めたりと、思い思いの時間を楽しめます。次の休日は、蔵前でゆったりとしたひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。
また、蔵前は浅草や東京スカイツリーなど、東京を代表する観光スポットへのアクセスも良好。旅の拠点として利用するのもおすすめです。
取材・文/馬渕 祥子 撮影/三原 久明
