2016年に発表された「めぶく。」というビジョンのもと、アートと文化を通じた都市再生に取り組んでいる群馬県前橋市。公立美術館をはじめ、リノベーションされた歴史的建造物や新たな複合文化施設など、次々にアートスポットが誕生し、注目を集めています。
そんな前橋市の中心市街地に点在するアートスポットと、歴史的建造物を1日で巡るモデルコースを紹介します。
目次
パンチングデザインが印象的な「アーツ前橋」
まず訪れたいのは、JR前橋駅から北へ徒歩約10分の「アーツ前橋」。かつて商業施設だった建物がコンバージョン※され、2013年に美術館として生まれ変わった施設です。
※コンバージョン…既存の建物を解体・建て替えずに、新たな用途で再利用すること
金属板に小さな穴が均等に開けられた「パンチングメタル」の外観が目を引きます。このパンチングメタルは、「人」「まち」「アート」を点に見立て、「点と点をつなぐ」という美術館のコンセプトを表現しているのだとか。
常設展示はなく、芸術文化活動の支援や振興を目的とした企画展を随時開催。詳細は公式サイトで確認できます。
展示スペースのほかにも、カフェやショップなど見どころが満載です。
「アーカイヴ」では、美術・芸術に関する和書や洋書、雑誌といった書籍が閲覧可能。県内外で開催されるアート系のイベントを告知するチラシやDMも置かれているので、アート好きにはもってこいの空間です。
ミュージアムショップ「amenbo(あめんぼ)」では、アートにまつわるアイテムや「アーツ前橋」オリジナルグッズを販売。
自家焙煎スペシャルティコーヒーショップ「ROBSONCOFFEE ARTS MAEBASHI(ロブソン コーヒー アーツ前橋)」では、おいしいコーヒーとスイーツ、軽食などが堪能できます。芸術鑑賞の合間、ほっと一息つきたいときに立ち寄りたいスポットです。
アーツ前橋
- 住所
- 群馬県前橋市千代田町5-1-16
- 営業時間
- 10:00~18:00(入場は17:30まで)
- 定休日
- 水曜日
- 入場料
- 無料
※企画展は別途有料 - アクセス
- 【電車】JR「前橋」駅よりバス「本町」下車、徒歩約4分
【車】関越自動車道「前橋」ICから約15分 - 公式サイト
- アーツ前橋
徒歩約3分
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「まえばしガレリア」でアートの最前線に触れる
「アーツ前橋」から北東へ3分ほど歩くと、「まえばしガレリア」に着きます。ここは、アートギャラリーやレストラン、分譲レジデンスを兼ねた複合施設です。
建物は、太田市美術館・図書館なども手掛けた建築家・平田晃久(ひらたあきひさ)氏が設計しました。
コンセプトは「一本の樹」で、至るところに緑があり、まるで建物全体が大きな木のよう。中庭を囲むようにしていくつもの箱を積み重ねたようなデザインがユニークで、建築物としても十分見応えがあります。
1階にはタカ・イシイギャラリーや小山登美夫ギャラリーなど、国内外で活躍する5つのコマーシャルギャラリー※が入居しています。
※コマーシャルギャラリー…絵やアート作品を売ることを目的とし、アーティストを応援しながら作品の販売や宣伝も行うギャラリーのこと
同じく1階には、レストラン「セパージュ」も併設。洗練された空間で、群馬県をはじめとする日本各地の食材を用いたフランス料理を味わえます。ワインも豊富で、21時以降はバータイムとして営業するため、2軒目以降の利用にもおすすめです。
そして、2階から4階はテラス付きの住宅になっており、実際に人々が暮らしています。ギャラリーと同じ空間に住めるなんて素敵ですね。アートと建築、そして生活までもが融合した、前橋の新たな文化拠点です。
まえばしガレリア
- 住所
- 群馬県前橋市千代田町5-9-1
- 営業時間
- 11:00~19:00
※[セパージュ]レストラン18:00〜20:30L.O./バー21:00〜24:00 - 定休日
- 月・火曜日
- 入場料
- 無料
- アクセス
- 【電車】JR「前橋」駅よりバス「坂下」下車、徒歩約3分
【車】関越自動車道「前橋」ICから約14分 - 公式サイト
- まえばしガレリア
徒歩約2分
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広瀬川沿いにたたずむ岡本太郎の幻の作品「太陽の鐘」
前橋市のキャッチフレーズ「水と緑と詩(うた)のまち」を表現するように、緑豊かな遊歩道として整備された広瀬川河畔。その一角にたたずむのが、芸術家・岡本太郎氏の手掛けた「太陽の鐘」です。
1966年に制作されたこの作品は、かつて静岡県のレジャー施設「日通伊豆富士見ランド」に展示されていましたが、1999年の閉園に伴って一般に公開される機会を失い、幻の作品となっていました。2018年、官民連携の取り組みによって前橋市に移設されてからは、市の新たなシンボルとして多くの人々に親しまれています。
直径約1.2メートル、高さ約2.4メートルのこの大きな鐘の設置場所は建築家・藤本壮介氏がデザインしました。普段はモニュメントとして人々の目を楽しませていますが、イベント時には、なんと長さ約24メートルもある撞木(しゅもく)で鐘を鳴らすことができるのだとか。
イベント情報は前橋市の公式サイトで随時告知されているので、チェックしてみてください。
生命の息吹を感じさせる緑とアートが融合した風景は、市民の憩いの場にもなっています。
太陽の鐘
- 住所
- 群馬県前橋市千代田町5-18
- アクセス
- 【電車】JR「前橋」駅よりバス「中央前橋駅前」下車、徒歩約1分
【車】関越自動車道「前橋」ICから約14分 - 詳細
- 太陽の鐘/前橋市
徒歩約2分
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「前橋文学館」で日本近代詩の父の足跡をたどる
「太陽の鐘」から広瀬川沿いを北に向かって歩くと、左手に見えてくるのが「萩原朔太郎記念・水と緑と詩のまち 前橋文学館」。
日本近代詩の礎を築いた詩人・萩原朔太郎を中心に、前橋ゆかりの文学者の資料を展示する施設です。萩原朔太郎の孫で、映像作家・俳優・編集者・大学教授など、多彩な顔を持つ萩原朔美(はぎわらさくみ)氏が特別館長を務めています。
『月に吠える』など、日本の近代詩に革新をもたらした萩原朔太郎の作品はもちろん、彼の私生活や趣味・嗜好などを紹介する特別企画展や収蔵資料展も開催。
常設展示室では、詩を読み上げる萩原朔太郎の肉声を録音したテープを聞くことも可能です。作者本人の声に耳を傾けながら、詩に込められた想いや息づかいを感じてみてください。
萩原朔太郎記念・水と緑と詩のまち 前橋文学館
- 住所
- 群馬県前橋市千代田町3-12-10
- 開館時間
- 9:00~17:00(入館は16:30まで)
- 休館日
- 水曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始、そのほか規則などで定める日
- 入館料
- 一般・大学生100円、高校生以下無料
※特別企画展開催時は別料金 - アクセス
- 【電車】JR「前橋」駅よりバス乗「本町」下車、徒歩約9分
【車】関越自動車道「前橋」ICから約15分 - 公式サイト
- 前橋文学館
また、広瀬川を挟んだ向かいには「萩原朔太郎記念館」も。この建物は萩原朔太郎の生家の一部を移築し、復元したものです。
萩原朔太郎が執筆や楽器演奏などで利用していた書斎を見ることができます。文学のみならず、音楽や写真、手品まで愛した好奇心旺盛な萩原朔太郎の生前の様子がうかがえますね。ぜひ、「前橋文学館」とあわせて立ち寄ってみてください。
萩原朔太郎記念館
- 住所
- 群馬県前橋市城東町1-2-19
- 開館時間
- 9:00~17:00(入館は16時30分まで)
- 休館日
- 水曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始、その他規則などで定める日
- 入館料
- 無料
- アクセス
- 【電車】JR「前橋」駅よりバス乗「本町」下車、徒歩約9分
【車】関越自動車道「前橋」ICから約15分 - 詳細
- 施設案内|前橋文学館
徒歩約9分
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「GRASSA」の絶品パスタでエネルギーチャージ
お腹が空いたら、「街のパスタ食堂」をコンセプトにしたアメリカン・イタリアンのお店「GRASSA(グラッサ)」でランチタイム。
建築家・中村竜治氏が設計した、レンガを用いた五角形の建物が印象的です。
一押しは、「GRASSAオリジナル目玉焼きカルボナーラ」(1,750円)。穴が空いた太めのパスタ「ブカティーニ」にソースがよく絡み、最後のひと口まで濃厚な味わいを楽しめます。
ウォッカを使ったトマトクリームパスタ「フジッリ イタリアンソーセージ ア ラ ウォッカ」(1,730円)もおすすめ。そのほか、地元群馬の食材を使ったサラダメニューなども充実しています。
GRASSA
- 住所
- 群馬県前橋市千代田町2-7-21
- 営業時間
- 11:30~14:00(L.O.13:30)、18:00~21:00(L.O.20:00)
- 定休日
- 月曜日、第1、3火曜日
- アクセス
- 【電車】JR「前橋」駅よりバス「本町」下車、徒歩約2分
【車】関越自動車道「前橋」ICから約14分 - 公式サイト
- GRASSA
徒歩約13分
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明治の面影を残す「臨江閣」でタイムスリップ
次に訪れるのは、明治時代に建築された国指定重要文化財の「臨江閣(りんこうかく)」。本館・別館・茶室から構成される和風建築で、レトロな雰囲気が魅力です。
中でも見どころは、別館2階の大広間と本館2階奥の「一の間」。
180畳もの広さを誇る別館の大広間では、天然記念物である中山道安中宿(あんなかしゅく)の並木から切り出した杉の巨木30本を使用。ここで、萩原朔太郎が結婚披露宴を行ったと言われています。
また、2023年「G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合」の夕食会も開催されました。
本館「一の間」は、明治天皇と大正天皇が宿泊したこともある部屋です。部屋の四隅には蚊帳や帳(とばり)などを張るための金輪が備えられており、格調の高さを感じます。
「臨江閣」前に広がる日本庭園は、婚礼・七五三の前撮りでも利用されることの多い写真映えスポットです。毎日、庭師が手入れして美しい景観を維持しており、赤松を中心に、春は枝垂れ桜を含む桜が、秋は紅葉が庭を彩ります。
臨江閣
- 住所
- 群馬県前橋市大手町3-15
- 営業時間
- 9:00~17:00(入館は16:30まで)
- 定休日
- 月曜日、年末年始(12月29日~1月3日)
※月曜日が祝日の場合は開館、直近の平日が休館 - 入館料
- 無料
- アクセス
- 【電車】JR「前橋」駅よりバス「るなぱあく・臨江閣前」下車、徒歩約1分
【車】関越自動車道「前橋」ICから約15分 - 公式サイト
- 臨江閣
徒歩約2分
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伝統と現代が融合する「前橋東照宮」で神聖な空間に触れる
前橋公園の一角には、創建400年以上の歴史を持つ「前橋東照宮」が鎮座しています。
2021年10月に完成した新社殿は、本殿を覆う斬新なデザインが特徴的です。旧社殿の建材を活用して伝統との調和を図りながら、歴史ある本殿を守る目的を果たしています。
社殿の奥にある建物が神様の鎮まる本殿です。社殿の中には厄除や七五三などの御祈願を受ける人だけが入ることができます。
境内には全国でも珍しい車専用の祓殿(はらいでん)もあります。県内外から多くの人が安全祈願に訪れるそうです。
同じく境内にある「Ravigote(ラ・ヴィゴット)in 大手町カフェ」では、パスタやグラタンといった絶品イタリアンランチやドリンクが味わえます。歩き疲れたら、ここでひと休みしていきましょう。
前橋東照宮
- 住所
- 群馬県前橋市大手町3-13-19
- 時間
- 参拝時間/9:00〜17:00
※[ラ・ヴィゴット]11:00〜15:00(L.O.14:30) - 定休日
- なし
※[ラ・ヴィゴット]火・水曜日(祝日の場合は営業) - アクセス
- 【電車】JR「前橋」駅よりバス「るなぱあく・臨江閣前」下車、徒歩約1分
【車】関越自動車道「前橋」ICから約11分 - 公式サイト
- 前橋東照宮
徒歩約14分
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美術館のような「SHIROIYA HOTEL(白井屋ホテル)」で五感を刺激
旅の最後は「SHIROIYA HOTEL(白井屋ホテル)」へ。300年以上の歴史を持つ「白井屋旅館」が、2020年に「アートで五感を刺激するインスピレーションに満ちたアートホテル」として生まれ変わりました。
設計は、大阪・関西万博の会場デザインプロデューサーであり、前述の岡本太郎の作品「太陽の鐘」の設置場所をデザインした藤本壮介氏。館内外に世界的なアーティストの作品が点在しており、どこを切り取っても絵になる空間が魅力です。
館内のカフェラウンジ「ザ・ラウンジ」では、宿泊者以外も朝食(予約制)、ランチ、アフタヌーンティーを利用することができます。
アルゼンチンの首都ブエノスアイレス生まれの芸術家、レアンドロ・エルリッヒ氏の作品「ライティング・パイプ」を鑑賞しながら、群馬の食材を生かしたフードやドリンクを楽しみましょう。
おすすめは、3日程度レモンと氷砂糖を漬け込んだ「自家製レモネード」(700円)。季節によって調整して作られており、ピンクペッパーの爽やかでスパイシーな香りがアクセントになっています。
「ザ・ラウンジ」は17~23時まで「アートラウンジ」として営業し、宿泊者は無料でアルコールや軽食、焼き菓子などを楽しめます(外来利用は別途5,000円)。21時以降になると「ライティング・パイプ」の色が変わり、幻想的な雰囲気に。また、群馬の郷土料理「おきりこみ」も楽しめます。
さらに、館内には完全予約制のプライベートサウナも完備。3種類のサウナがあり、セルフロウリュと水風呂も体験できる「フィンランドサウナ」と、ハーブの香りに包まれる「薬草ミストサウナ」は宿泊者以外も利用可能。寝転んでサウナを満喫できる「ベッドルームサウナ」は宿泊者限定です。
ちなみに、ホテルの隣には複合施設「ばばっかわスクエア」もあります。こちらにもおしゃれなショップやカフェが入っているので、ぜひ立ち寄ってみてください。
SHIROIYA HOTEL(白井屋ホテル)
- 住所
- 群馬県前橋市本町2-2-15
- 営業時間
- [ラウンジ]モーニング/7:00〜10:30(L.O.9:30)、ランチ/11:30〜14:30(L.O.14:00)、ティー/14:30〜17:00(L.O.16:30)、アートラウンジ/17:00〜23:00
- 定休日
- [ラウンジ]年中無休
- アクセス
- 【電車】JR「前橋」駅よりバス「本町」下車、徒歩約1分
【車】関越自動車道「前橋」ICから約9分
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「水と緑と詩のまち」と称される前橋市は、広瀬川の水辺環境や豊かな緑が魅力。アートによる都市再生も進んでおり、歴史的建造物とアートが融合した独自の景観が形成されています。
ご当地グルメや宿泊施設も充実しているので、日帰り観光はもちろん、何泊か滞在してアートスポット巡りをするのもおすすめです。
取材・文/望月優衣 撮影/横山博之
