9月も半ばを過ぎ、朝晩の風がすこしずつやわらぎ、空の色にも秋の気配が混じりはじめました。夏の間にたっぷりと浴びた陽ざしの疲れが、肌や内側にじんわりと残るこの時期。なんとなく身体が重い、ぐっすり眠れない、気分が落ち着かない…。そんな変化を感じたときこそ、自分の「巡り」に意識を向けて、そっとととのえてあげる時間が必要かもしれません。
湯に浸かり、熱をまとい、深く息を吐く。その一連の営みが、日々の生活でこわばった心や体に、静かなリズムと余白をもたらしてくれます。今回は、「養生」という視点から、湯や蒸気、漢方の香りなど、五感にやさしくはたらきかける自然の力を借りて、心と体を外側からも内側からもゆるやかにととのえていく滞在を、全国各地のサウナを旅するしきじの娘・笹野美紀恵さんがご紹介します。
石和名湯館 糸柳(山梨・笛吹市)
温泉、薬石浴、ととのいが一体となった、養生のための宿泊施設
山梨・石和温泉の「石和名湯館 糸柳」は、温泉・薬石浴・サウナ・地産の食養生までを一つの滞在の中に組み込んだ、まさにととのえることを目的とした養生型の宿泊施設です。チェックイン後はまず、自家源泉かけ流しの温泉へ。アルカリ性単純温泉ならではのとろみのある湯が肌をやさしく包み込み、長旅で疲れた体をじんわりと緩めてくれます。
続いて訪れたいのが、15種類の薬石が敷き詰められた天然温泉薬石浴「嵐の湯」。遠赤外線とミネラル成分の相乗効果で体の芯までじっくり温まり、無理のない形で深い発汗を促してくれる、養生にぴったりの温浴体験です。
さらに、大浴場には約88℃のドライサウナを併設。適度な熱さでしっかりと汗をかいた後は、富士山の伏流水を使った18℃前後の水風呂へ。やわらかな肌あたりの水に包まれながら、露天風呂の縁で自然音を聞きつつ深くととのう時間を過ごせます。
食事面も、養生の視点が随所に感じられる構成に。夕食には山梨の旬の食材をふんだんに使った創作懐石、朝食には薬膳カレーや手作り和食膳などが並び、内側からもしっかりと自分をととのえていける内容です。伝統とモダンが心地よく調和した空間で、心と体の声に耳を傾けたくなる、そんな静かな時間がここにはあります。
笹野さん:薬石浴、温泉、サウナ、そして地産の滋味深い料理。すべてが養生の感覚と直結していて、滞在そのものが整う時間になります。気張らずにリセットしたいとき、ふと思い出すような場所です。
石和名湯館 糸柳
- 住所
- 山梨県笛吹市石和町駅前13-8
- 総部屋数
- 42室
- アクセス
- 【電車】JR中央線「石和温泉」駅より徒歩約3分
【車】中央自動車道「一宮御坂」ICより約15分、甲府方面に向かい「石和温泉駅入り口」を右折
塩原温泉 湯守田中屋(栃木・那須町)
那須の自然でととのう、湯治文化とサウナが交差する養生の宿
那須の山あい、渓流沿いに佇む「塩原温泉 湯守田中屋」は、3本の自家源泉を持つ温泉宿。昔ながらの湯治文化と、現代的なサウナカルチャーが共存し、外側からも内側からもととのう養生滞在がかないます。
チェックイン後は、森の空気と川の音に包まれ、日常から少しずつ心身がほどけていく感覚に。敷地内から湧く源泉は、刺激が少なく肌にやさしい単純温泉。渓流沿いの露天風呂では川のせせらぎをBGMに、自然の中で深くリラックスできます。さらに、館内には「飲泉許可」を得た温泉もあり、「体の内側からのケア=内臓からの養生」を実践できる貴重な湯治体験も可能です。
サウナは、韓国伝統の床暖房を応用したオンドル式低温サウナを採用。床に水を撒くセルフロウリュもでき、じんわりとやさしい発汗が楽しめます。すぐ隣にある水風呂は冷たすぎずに入りやすい温度。露天風呂のととのい椅子に座れば、森と川の音に包まれながら自然と一体化した外気浴が味わえます。
夕食は、地元食材を使った炉端料理。那須野ヶ原牛や契約農家の野菜など、旬の恵みをじっくりと火入れしながら味わうひとときが、心身を内側からととのえてくれます。朝食は和食中心のやさしい膳で、滞在全体を通して、自分をいたわる養生時間が流れます。
笹野さん:飲泉ができる温泉ってすごく貴重で、外側だけでなく内側からととのえるという湯治の本質に触れられる宿だと思います。自然の音に包まれながら、サウナと温泉、食事でじんわりとととのう。そんな養生の旅を体験できる場所です。
塩原温泉 湯守田中屋
- 住所
- 栃木県那須塩原市塩原6
- 総部屋数
- 20室
- アクセス
- 【電車】東北新幹線「那須塩原」駅より無料送迎(事前予約制)
【車】東北自動車道「西那須野塩原」ICより約15分
リバーリトリート雅樂倶(富山・富山市)
薬草と温泉、アートの静けさに癒される、感性をととのえる養生宿
富山の清流・神通川のほとりに静かに佇む「リバーリトリート雅樂倶」。四季折々の自然に包まれ、館内に点在するアートや香り、味、音が、訪れる人の五感をやさしく研ぎ澄ませてくれます。日常の喧騒から離れ、感性の奥深くをととのえるような、静かな時間が流れる場所です。
宿泊者専用の「薬都逗留 Spring Day Spa」では、富山の伝統を取り入れた薬草蒸しを体験可能。トウキ・ヨモギ・ヒノキなどの自然薬草を用いた蒸気浴は、体を芯からじんわりと温め、全身の巡りとデトックスを促します。蒸された後は、川のせせらぎに包まれる露天風呂へ。静けさとともに、体と心の緊張がゆっくりとほぐれていきます。
この宿の大きな魅力は、薬草蒸しと本格サウナの両方を楽しめること。男性用浴室には約86℃のドライサウナ、女性用浴室には薬草蒸しと兼用のスチームサウナがあり、それぞれ異なるアプローチで深いととのいを体感できます。こうした環境が一つの施設にそろっているのは、とても珍しく貴重な存在です。
水風呂には、冷たい炭酸泉を使用。まろやかな水質と心地よい冷感が、サウナ後の体にすっとなじみます。外気浴は、神通川沿いの露天風呂の縁が特等席。せせらぎや風の音を感じながら、自然との一体感に身をゆだねることができます。
食事にも、内側からととのえる工夫が込められています。富山の海や山の恵みを活かした創作料理は、見た目も味わいも繊細で、心身ともに満たされる時間に。季節野菜をふんだんに使ったパワーサラダや、富山湾の海水でつくるデトックスウォーターなど、ここでしか味わえない食の養生も魅力の一つです。
アートが飾られた静かな空間で過ごすひととき、体調に寄り添うトリートメント、自然と向き合う温浴体験。この宿では、目に見えるもの、香り、音、味、肌ざわりといった、すべての感覚を通して自分をととのえていくことができます。感性をととのえる養生の旅を求める方にこそおすすめしたい、唯一無二の滞在型温浴宿です。
笹野さん:薬草蒸しと本格サウナ、どちらもそろっているのは本当に貴重。五感をととのえるように、丁寧につくられた空間設計やお料理も含め、養生を体感できる宿だと思います。アートの静けさや自然のゆらぎに包まれて、深く深く、自分をいたわる時間を過ごせる場所です。
リバーリトリート雅樂倶
- 住所
- 富山県富山市春日56-2
- 総部屋数
- 23室
- アクセス
- 【電車】JR「富山」駅より車で約40分
【車】北陸自動車道「富山」ICより約20分、富山空港より約20分、金沢市内より約80分

